内容説明
フランス北部に広がるフランドル地方のサンヴナン精神病院に勤務する日本人留学生コバヤシの精神科医としての日常を描く、著者自身の留学経験をベースにした長編処女作。1967年に発表され、芸術選奨新人賞を受賞。精神を病んだ患者たちとの想像を絶する日々―それは正に過酷そのものだった。若い看護婦との同棲や、フランス人医師たちとの交流は深まるものの、コバヤシは青空が殆どないフランドルの空の下、自己と患者との境界を踏み越えて正気と狂気の間をさまよい始めるのだった。復刻にあたって、著者あとがきも新たに併録。
著者等紹介
加賀乙彦[カガオトヒコ]
1929年(昭和4年)4月22日生まれ。東京都出身。本名は小木貞孝(こぎさだたか)。主な作品に『帰らざる夏』(第9回谷崎潤一郎賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みいやん
9
1967年に出版された著者の処女作。著者自身の経験を元に描かれているが、精神医学も古く、舞台はフランス北部の田舎で難解なところが多い。でもなぜか読むのを止められなかった。主人公でさえないコバヤシが東洋人ゆえに怪我をしても助けてもらえなかったり、正常と狂気の境界の世界とか興味深かった。2019/09/15
たまさぼ
2
多くの長編小説を書いている著者の処女作で、前から読んでみたかった本が、小学館からペーパーバックで新装発刊されたのを機会に読んでみました。著者の分身と思われる主人公コバヤシの心理の放浪にも引き込まれましたが、主人公の周りに登場するフランス人たち(精神病院の医師、看護婦、患者たち)もそれぞれ個性的で、魅力的でした。舞台は違うものの、著者の「宣告」や「永遠の都」につながるものが、やはりここにもあると思います。2019/08/11
cochon_voyage
0
処女作なのか… なんか文体が翻訳物みたいでどうも馴染めない。2024/07/29
ゆきじん
0
結構スラスラと読める。しかし、何を主としているのか分からなかった。そういう意味では難しいような。少なくともフランドル地方に行きたいとは思わない。2022/06/11