出版社内容情報
現実世界と小説世界が交錯する斬新な異色作
家賃代わりに差し出される短篇小説と、それに対して辛辣コメントを浴びせ続ける家主。やがてコメントは作家の精神を抉るような質問状となり、青春をともに過ごした2人の中年女性の愛憎が垣間見えてくる。
小説を書くのは鳴かず飛ばずの作家・昌子で、その読み手は昌子が居候する家主で20年来の友人・鈴子。小説を介して、お互いの感情をぶつけ合う2人の切なさとおかしさを、現実世界と小説世界が入り交じる奇抜な手法で描いた著者の異色作。
松浦 理英子[マツウラ リエコ]
著・文・その他
内容説明
家賃代わりに短篇小説を差し出す書き手と、それに対して辛辣コメントを浴びせ続ける読み手。やがてコメントは書き手の精神を抉るような質問状となり、青春を共に過ごした二人の中年女性の愛憎が垣間見える展開に―。現実世界と小説世界が入り交じる斬新な手法で描いた異色作。
著者等紹介
松浦理英子[マツウラリエコ]
1958年(昭和33年)8月7日生まれ。愛媛県出身。1978年「葬儀の日」で第47回文學界新人賞を受賞しデビュー。1994年『親指Pの修業時代』で第33回女流文学賞、2008年『犬身』で第59回読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
圓子
8
普段は蓋をしてやり過ごしているような痛みや不快感を書かせたら、当代随一の作家ではないだろうか。身体的な痛みの描写もすごくうまいけど。私は、昌子の部分も鈴子の部分もどっちも持っているから、内なる二人の殴り合いのようにも読める。いや?もしかして昌子の(あるいは鈴子の)一人遊びだったのだろうか…。2018/04/27
lala
3
『ナチュラル・ウーマン』と並び、わたしにとって最も重要な本の中の一冊かもしれない。「創作」を介した女たちのつながり、性愛に至らないがあまりにもつよい絆、ほんとうにユーモアと愛とエモさでいっぱいで、すばらしいという他ない。「ともだち」にときめくこと、性愛ではない繋がりを求めること、わたしたちの「親密性」は実に様々でありうること、を全力で肯定してくれる物語だとおもった。こういう風に生きたいし生きよう、というきもちでいっぱい。中年女たちの絆にときめきが止まらなかった。だいすき。2018/02/06
dokusyotyu24
2
すごく面白い。著者の松浦理英子さんは、小説の語り手という制約をとても上手く利用する方だと思う。今回の物語は、主人公の書く短編小説と、その小説に対する友人のコメントという変わった形式で構成されている。最初の数編の小説は主人公から離れた世界を描いているが、だんだんとそれらは私小説じみてきて、私たち読者に主人公と友人の関係性を明らかにしていく。小説とコメントの合間から覗き見える、恋人になれなかった恋人以上の友人である二人の関係はスリリングであり、非常に面白い。また改めて『最愛の子ども』も読み返したくなった。2021/06/12
hyyuiht
1
この本に巡り会えた人生に感謝します。2023/08/24
二階堂
1
私は文学にこういうものを求めていたんだ、と気づかされた凄い作品。特別な共感性を分かち合った高校生時代、挫折と失望の20代、もう一度と願った40歳、こう言ってみれば凡庸に聞こえる物語を「小説を読む/読ませる」という構造に落とし込むことでこんなにも面白い小説になるなんて、本当に感動してしまった。昌子の希求も鈴子の切実さもともすれば愛と呼ばれるものに落ち着く可能性があったのに、2人はプライドや性的欲求のすれ違いによってどうしようもなく拗れてしまう。それでもそばにいようとする女と女の物語、これが読みたかった!!!2022/03/05