出版社内容情報
戦中戦後の上海を描いた傑作二編が甦る!
『上海の螢』は、著者が32歳で中日文化協会の文官として滞在した約2年間に及ぶ、敗戦前後の上海での体験を克明に記録した貴重な史料でもあり、一編を遺して未完のままとなった遺作。
1947年発表の『審判』は、『上海の螢』より古く、一兵卒として中国参戦した自身の戦場での体験告白でもあり、誰にも裁かれない自分の犯した戦争犯罪を自身の手で裁くために描かれた問題作。
第一次戦後派作家の“巨人”武田泰淳と上海という場所の因縁深い2作を同時収録。
武田 泰淳[タケダ タイジュン]
著・文・その他
内容説明
『上海の螢』は、著者が32歳で中日文化協会の文官として滞在した約2年間に及ぶ、敗戦前後の上海での体験を克明に記録した貴重な史料でもあり、一編を遺して未完のままとなった遺作。1947年発表の『審判』は、『上海の螢』より古く、一兵卒として中国参戦した自身の戦場での体験告白でもあり、誰にも裁かれない自分の犯した戦争犯罪を自身の手で裁くために描かれた問題作。第一次戦後派作家の“巨人”武田泰淳と上海という場所の因縁深い二作を同時収録。
著者等紹介
武田泰淳[タケダタイジュン]
1912年(明治45年)2月12日―1976年(昭和51年)10月5日、享年64。東京都出身。1973年『快楽』で第5回日本文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
64
戦争がいかに人の心とモラルを破壊してしまうか、それに「審判」を下さねばならなかった青年の胸中はいかばかりであったか・・・。いまだに心的外傷を抱えて生きる人々も、口には出さぬが数多くいるのだろう。読後感は、ただ虚無であった。2016/11/23
YO)))
27
「上海の蛍」、 戦争末期の上海の租界において、東方文化協会なる職場で日中の文化交流のための出版を手がけていた折りの、極めて曖昧な日々が曖昧なままに書かれていて凄いと思った。 上海の人、本国の日本人、日本から訪れる文人、何れにも距離を感じて時に突き放すようなことを言い、しかし一方でそれぞれへの淡い愛惜も示すような、宙ぶらりんの、悲哀ともいえぬような何か。「めまいのする散歩」に続く作品として最晩年に書かれた未完の連作とのことだが、容易には読み解けない、武田文学の終局的な境地があるのではないだろうか。2019/09/23
かふ
15
「上海の蛍」から数編の短編は敗戦間際の国際都市上海ての生活を描いた私小説。まだ作家以前の日中文化協会の文官として日本の文化を占領地の中国人に戦時教育するがその地でしたたかに生きる中国人と日本からやってくる作家のことなど。左翼崩れが大陸にくると横暴になったり日本の流行作家の姿を批判的に描きつつ自身のやるせなさ、自堕落に中国酒に酔っ払う姿は戯作作家の生き方に通じるようだ。2019/09/27
しょうゆ
8
「上海の蛍」をはじめとする散歩シリーズはよく分からない不思議な文章だった。実名とアルファベット名が入り混じる謎の空間が、当時の上海の猥雑さを象徴しているみたいで面白い。「審判」はとても良かった。戦時中に犯した罪を自分で裁き自分で見届ける青年。短いながらもグッとくる表現が多く、これを読むためだけにこの本を買う価値はあると思った。2017/08/24
魚53
3
『審判』は圧倒的だった。鉛のように無神経なもの。無理になにか乗り越えようとする感覚。やりたくない仕事、気が進まないけど乗り越えるときの感覚。自分を無にして、その状況に同調する。そればかりか必要以上に積極的に行動しもする。興奮して、やってやったと思う。平常のときには信じられないことを平然と行う。なにか剥き出されているようで凄みがあった。2024/02/25
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