出版社内容情報
父の実像を追求する『血族』の続編的長編
「私は競馬に熱中する。父の血が競馬にかりたてるように思うのだ」――私は府中の競馬場のパドックで、川崎の幸町小学校時代の同級生・石渡広志に、偶然出会った。
このことがきっかけとなり、私の川崎での幼時体験の記憶がうごめき出す。記憶の彼方にいるおぼろげな父の像。そして、そこに悪夢がオーバーラップし始める。前作『血族』に続き、私小説的な手法を用い、熱き愛で静かに父の実像を凝視した長篇。
山口 瞳[ヤマグチ ヒトミ]
著・文・その他
内容説明
「私は競馬に熱中する。父の血が競馬にかりたてるように思うのだ…」主人公の私は府中の競馬場のパドックで、川崎の幸町小学校での同級生・石渡広志に偶然会った。このことがきっかけとなり、私の川崎での幼時体験の記憶が動きだす。記憶の彼方にいるおぼろげな父の像。そこに少年時代の恐ろしい夢がオーバーラップしてくる…。傑作『血族』の続編ともいえる作品『家族(ファミリー)』。私小説的な手法を用い、熱き愛で静かに父の実像に迫った山口瞳渾身の長篇。
著者等紹介
山口瞳[ヤマグチヒトミ]
1926年(大正15年)11月3日―1995年(平成7年)8月30日、享年68。東京都出身。1963年『江分利満氏の優雅な生活』で第48回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みや
8
母の出自に迫った「血族」に続き、謎に包まれた自らの父親の秘密を追い求める私小説。老境に至った作者が、幼少期の思い出を手がかりに自身の生い立ちを検証しつつ、平行して競馬に没頭する日常を綴る。ギャンブラーの行動原理や競馬仲間とのやりとりが冗長に描かれるなかに、どこか不穏な雰囲気が漂う。しかるに、終盤に訪れるカタストロフィは、さもありなんの感。この作者はどうも掴みどころがない。可憐な名前と無頼を匂わせる言動とのギャップのせいかもしれない。2021/01/28
massda
2
小説で読む川崎の昔。だいぶジェントリファイされたけど、いまもこんなアングラな雰囲気は残ってると思う。とても面白い。2019/10/21
kj.star
2
本作は「血族」とともにある意味で問題作として取り扱われた作品のようである。タイトルは『家族』であって、メインテーマは「家族との葛藤」とか、「家族愛」などの感情についてであるが、自分は多少違った感想を持った。当然個人による感受性や、生まれ育った環境の相違もあるだろうが、時代背景による考え方の変化が大きいのだろうか?。人種や職業を含め、経歴にとらわれない生き方に寛容となった現代は、昔と比べて幸福かもしれない。本作にて自分が受けた印象は、『競馬に魅せられた男たちをめぐる第二の青春』といったところか。2016/11/16