出版社内容情報
アメリカと日本の間で揺れた家族の物語
ハナコの家族は、ロサンゼルスでレストランを経営して暮らしていた。
しかし、大きな戦争が終わり、船で日本を目指すことになる。
日本は、ハナコにとって未知の国だ。
「ハナコ、ぼく、こわいよ。
どうして、こんな船に乗らなきゃいけないの?」
「もう、アメリカには、私たちの居場所はないからよ」
ハナコたちは、すべてをなくして、日本に降り立った。
ハナコたちを待っていたのは、戦後間もない荒れ果てた大地。そして、ハナコたちを愛してくれる祖父母だった。
歴史に翻弄されながらも、前を向いて生きる強さを教えてくれる感動作品。
【編集担当からのおすすめ情報】
「全編にちりばめられているのは、家族三世代の強い絆と、人が生きていく上での『希望のありか』だ。切なく深い物語は、一読、心を去らないだろう」
帯に寄せていただいた、広島を描く児童文学作家、朽木祥氏の言葉が、この作品のすばらしさを伝えています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
26
二つの祖国の狭間で苦しんだ日系人一家が戻っていった先は何と広島。祖国がもう一つの祖国を再起不能なまでに破壊するという悲劇を子供のハナコはまだ実感できていない。そんなハナコが実感できるのは日本はとんでもなく貧しいということだけ。戦勝国から敗戦国への帰還、そしてまた未来のある戦勝国へ。曖昧な未来に向けて一歩を踏み出す少女。2021/08/20
Ayakankoku
16
久しぶりに夢中になって読んだ1冊。戦争中の様子や戦争後の様子。目の前に情景が浮かんでくるほどの筆致の力強さがあった。日系アメリカ人のハナコは、第2次世界大戦時には、日系人強制収容所に暮らし、戦後は祖父母のいる広島で暮らすことに。闇市の話などは、歴史の授業で学んだことがあったが、本書を通して、どんな思いで人々が食糧を調達していたのか、その一端を知ることが出来た。また、戦争孤児と呼ばれる子ども達にも想いを馳せながら読むことが出来た。辛い描写と共に、家族が愛し合う姿勢は何もの出会っても奪えないということも実感。2021/08/10
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
15
ハナコは海外移民の娘。父は、貧しさを脱し夢を抱いてアメリカへ渡りレストランを経営、家族で幸せに暮らしていましたが、日本軍による真珠湾攻撃で、日系人は理不尽な処遇にあいます。終戦後市民権と財産を失った家族は、日本の広島へ戻りますが、そこには被爆後の姿が…。2020/09/07
Incisor
11
ハナコの目でみた当時の広島は、日本は、アメリカは、心に爪が深く強く食い込んでいくようだったけど、この痛みを感じ続けなければ、一瞬でも気をゆるめたら、過去も現在も未来もあっという間にうしなってしまいそうな心もとない気配を感じる昨今。ハナコと弟、父母、祖父母、三世代の、互いを深く強く思いあう気持ちが、揺るぎない強いよりどころとなり、きっと生き抜いていったと思う。どんな時代でも、思いがけない時代となっても前に進んでいこうとする勇気をもらった。2020/08/07
Sachi
9
終戦を迎えてすぐに平和が訪れた訳ではない。爆弾の脅威に曝されることがなくなったとしても、どうやって食べ物や住む場所、衣服を確保し、どうやって生きていくのか。自分が持っているわずかな食糧を、自分より困っている人に恵むことが善であるのか。それをすることで自分の家族に不利益を与えることは悪ではないのか。この本を読むまで考えたこともなかった。生き残った人たちの苦悩を感じる一冊。2021/05/07