出版社内容情報
1665年、50万都市ロンドンをペストが襲い8万人以上の命が奪われた。治療法を知らぬ市民は極限状況に追い込まれた。『ロビンソン・クルーソー』の著者が、事実の証人として地獄絵図を精密に描き出した名作。
目次 第一章 発端 最初の犠牲者／金持ち連中の脱出／ペスト下の街／彗星、予言者、幽霊の出現／占い師／詐欺師とにせ医者／護符 第二章 受難 感染家屋の閉鎖令／閉鎖家屋からの脱出／発病の恐怖／死体の埋葬／逃亡患者／ペスト流行の原因／命がけの食料買い出し／腫れものの苦しみ／帽子泥棒／経済活動の停止／二カ月で五万人の犠牲者／テムズ河船上に避難した人々 第三章 放浪 疎開の準備／出発／新しい集団との出会い／町への立ち入り禁止／森の小さな野営地／キャンプ地からの旅立ち 第四章 戦い 検査員任命／絶望から融和へ／ペスト最盛期／埋葬と食料の確保／疫病患者隔離病院／ロンドン市当局の対策／健康保菌者による伝染／ペストの伝染経路／疎開こそ最良の処方箋／貧者への救いの手／ペストの商業・貿易 第五章 復活 早すぎた帰還／甦るロンドン／掘り返された墓地／国教会と非国教会の対立／ペストの終焉 解説 栗本慎一郎 リスト・オブ・ブックス
内容説明
１６６５年、ロンドンをペストが襲った。極限状況に追い込まれた市民。事実の証人として地獄絵図を精細に描きあげたデフォーの名作。
目次
第１章 発端
第２章 受難
第３章 放浪
第４章 戦い
第５章 復活
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kasim
37
ペストと言えばカミュの素晴らしい作品も思い起こされるけれど、18世紀らしい創作混じりのドキュメンタリーのこちらも淡々とした記述にかえって迫力がある。医学史的にも貴重な資料で、今も昔も疫病への人の反応は変わらない。家屋閉鎖という隔離。病の家族を捨てて逃げる人、ともに閉じ込められ命を落とす人。恐慌から無感覚、開き直りへ。驚いたのは、終息は翌年のロンドン大火の怪我の功名だと思っていたのに、この本の記述では自然にピークを過ぎ収まっていくこと。他に少し調べても、確かにその通りらしい。何だろう、これ。2020/02/16
こぽぞう☆
19
本棚片付けてたら出てきた。疫学の歴史は興味があって、同時代の人の（この場合は、さらに文豪の）文章は面白いな。夏場に家の中でガンガン石炭を燃やすと予防できた、というのはなんか説明できるのかな？2019/09/28
せいたろう
14
ロビンソンクルーソーの作者デフォーの作品。平易な文章でとても読みやすい。1665年ロンドンで起きたペストの大災厄。50万人の人口のうち8万人が亡くなる。死体を運ぶ御者さえ途中で死ぬ。1人でも病人が出たら家族ごと家屋を封鎖。そのような中、市民を不安がらせないよう危険な人混みの中を歩き回った市長らの姿は感動的だ。対処療法も存在しない時代に勇気を奮い起こした。驚くのはその間パンの値段が高騰することなく抑えられていたこと。デフォーは病魔が衰えたのは神の恩寵と結論していたが現在ではどのように考察されているのか。 2019/11/16
ムーミン２号
11
『ロビンソン・クルーソー』が有名なデフォーさんはジャーナリストでもある。1665年にロンドンを恐怖に巻き込んだペスト禍を描く本書の原・刊行年は1722年。後半のデフォーさんによる考察には今のコロナ禍とのあまりの符合に戦慄さえ覚えるほどだ。そして３密を避けようとの提唱の正しさとともに、350年前と変わらない人間の愚かさに溜息が漏れる思いがする。今さら日本政府のスピード感の欠如をとやかく言うまい。しかし、ペスト禍で苦境に陥った業種、体力のあるなしが倒産を左右することも含め、関係各位には一読を課したいくらいだ。2020/05/24
クサバナリスト
8
『ペストの記憶』とのタイトルで最近翻訳された方(以下の番組の今月の指南役の先生の翻訳)を読もうとしたのだが、こちらを読んだ。今月のNHK『１００分de名著』の今月の課題本。現在の新型コロナの社会状況と同様なことが当時のイギリスで起こっていたことに驚いた。人間の行動・心理というのは何百年たっても変わらないものだと感じた。2020/09/08
