出版社内容情報
現代では失われてしまった花柳界。外からは極めて華やかに見える世界だが、その内側では、一般社会をしのぐような暗さを併せ持っていた。その暗い部分を、上村一夫はこの「凍鶴」で余すところなく描き切った!
▼全14話●登場人物/つる(芸者・幼いころに置屋(芸者を管理・派遣する商売)に売られ、芸者を目指す。片足を上げ、もう片足で立つ仕草から名付けられた)、お女将さん(つるのいる置屋のおかみ。陰性の知恵がよく働くが、人情も持ち合わせている)●あらすじ/「松乃屋」という置屋に売られ、芸者の修行をしているつるは、まだ十を過ぎたかどうかの少女。彼女のような子を、花柳界では「仕込っ子」とよんでこき使っていた。そんなある日、届け物に行った先で、つるはヒロシという寝たきりの男の子に出会う。つると二人きりになった彼は、芸者になった姉と寝たきりの自分の境遇を、そしてその原因となった貧乏への恨みを切々とつるに語り出すが、彼女はうつむいたまま。すると、ヒロシは突然懐から金を差し出し、つるに「きみの裸をみせてほしい」と迫る。一瞬ためらったつるではあったが、故郷の母を思いながら、彼女はきっぱりと着物を脱ぎ捨てた(第1話)。▼松乃屋一のべっぴんである花千代が逃げ出した。彼女はその翌日に、竹内先生と呼ばれる旦那に落籍されることになっていたのだ。結局彼女は交番で縄をかけられており(当時、花柳街の入口には必ず交番があり、芸者が逃げ出さないように見張
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
8
日本で貧しい女の子が(公に)売られなくなったのは本当についこないだの事。そして、いつまたひどくなるかなんてわからない。けれど、やっぱり生きていかなくちゃいけない。そして、女の人生ってけっこう、すごい。男にこんなことできるか馬鹿野郎。そんなふうに思いながら読んだ思い出がある。また本棚へ。2015/09/18
aof
4
「ザ・ビックコミック」な名作。 小さい頃、こっそり読んでドキドキしたときの空気感を思い出す。 でも大人になってせいせい読むと、疲れるな、上村一夫。読むのにエネルギーを使う本。 遊郭という甘美な響きと、一人の人間の人生が身体も含めて他人に使われてしまう苦しさが堪らず、読んでて疲れた。2019/05/02
さおりんご
0
雑誌掲載時はもっと陰惨な描写が有ったが まるっと消えて直されている。 当時でさえ、とても収録出来ないと判断されたのだろうが。2020/12/09