出版社内容情報
第一次大戦直後のパリの街角。エリザベートとポールの姉弟にとって、その部屋は夢幻の王国だった。宝物遊び、夢遊び。無軌道な子どもたちの永遠に似た混沌。だが、思春期の情熱がまどろみを破り外の世界があらわれた時、すでに悲劇は約束されていたのだった…。ジャン・コクトーの小説詩をもとに子どもたちの純粋で危険な世界を描き出す、萩尾望都のアンファン・テリブル!
第一次大戦直後のパリ。思春期の子どもたちに訪れた混沌と悲劇。ジャン・コクトーの小説詩をもとに、子どもたちの純粋で危険な世界を描き出す、萩尾望都のアンファン・テリブル!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
43
ポールとダルジュロスの関係は「トーマの心臓」で高潔なユーリが虚無的なサイフリートに惹かれる構図に近い。説明不能な悪の色気を魔性と呼ぶのなら、著者はその美に屈する人の弱さを氷のペンで淡々と描き出す。だがエリザベートとポールの姉弟は悪ですらない。善悪を超えた無邪気な残酷さ。彼らに憧れ、嵐の海に浮かぶ船の様に翻弄されるジェラールとアガートは我々の代弁者。恐るべき子どもたちを止められるのは彼ら自身のみ。エゴと思いやりが混ざり過ぎたエリザベートの行為は間違っていたのか? 純粋過ぎる愛は悪よりも悲劇。小説も読みたい。2016/04/27
二戸・カルピンチョ
27
原作を読んだ後の再読です。細かいところまで作画されてるのに気付きます。台詞もぼちぼち一緒ですが、やはり萩尾さんのフィルターは通されてます。最後のシーンは、少女漫画としてあれが精一杯でしょうか?伊藤潤二が描いたら凄いな。2018/03/16
二戸・カルピンチョ
21
子どものままでいられるのならいいな、とふと思うこともあるけれど、それではボタンの掛け違いばかりで無秩序なままか。依存せず他者を思うことと自分に責任を与えることが、人間には必要なのね。努力なしに生きていけるこの子どもたちには、綺麗で残酷な終わりしかない。始めから終わりまでずっと夢の中。心地よすぎる。2023/03/19
テイネハイランド
18
コクトーの原作小説「恐るべき子供たち」と共に読みました。原作の小説から不純物を除いてエッセンスだけを抽出したようなマンガになっていて、こちらのマンガを読んだほうが、メインキャラクターであるエリザベートとポールの心理の動きをつかみやすいと思いました。元々の小説そのものがファンタジー色が強くかなり現実離れしたところがあるだけに、萩尾氏のストーリーテラーとしての力量もさることながら、マンガ化にとても向いていた素材といえるのではないでしょうか。2019/03/03
akio
18
キリキリとした緊張感と幻想的な世界観をもつ原作を漫画化できたのは萩尾作品だからでしょう。さすがです。原作を補填するようでいて、新しい視点を発見するような不思議な作品になっています。原作で登場シーンこそ少ないものの強烈な印象を残すダルジュロス。絵で表現されると、いたるところに影をおとしポールに影響を与えていたことがイメージとして受け入れやすかったように思います。2015/09/26