出版社内容情報
静謐の中で、ドラマは進む――
嫁いでいった娘からもたらされた、たった一言。
「離婚しようと思う」。
劇的な変化があるわけではない、日常の延長。
しかし、心の中が、目に映る風景が、ほんの少し
その色調を変えてゆく…。
単行本描き下ろし作品。
【編集担当からのおすすめ情報】
前作『ダニー・ボーイ』(青林工藝舎刊)より5年、
手塚治虫文化賞新生賞受賞作家が満を持して放つ意欲作です。
必要最小限のセリフ、説明を省き削ぎ落とされた描写により、
一見、「文学のような」「映画のような」と形容されそうな
本作ですが、これこそが著者の辿り着いた「マンガ表現の
ひとつの到達点」であると確信しています。
ぜひご一読ください。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
61
どこの街や都市にもある何気ない道や建物の風景が描かれているのに哀愁を感じてしまう。時間をおいて読むと何かが見えてくるような…2014/12/07
山口透析鉄
29
けっこう前にe-honで注文して購入していましたが、ずっと放置しておりました。ロボサピエンスも一緒に買っていたようなので、その頃に入手したのでしょうか。 今回ようやく初めて読みました。 私も小津安二郎監督の作品を連想しました。非常に特徴的な、コントラストの効いた画面構成で、作画の手間隙が大変そうです。 でも本編の内容は至ってシンプルなようでいて、割と普遍的な人間模様や風景を描いているようですので、何とも言えない読後感が残ります。 読みだすとすぐ読める頁数ですが、この作品は再読したいです。2023/10/04
ぐうぐう
16
『トロイメライ』の島田虎之介、最新作。この洗練さを、なんと例えればいいのだろう。説明的描写を極力排除することで、画の中に、あるいはセリフの中に、驚くほどの奥行きが生まれる。読者の想像が起こす、それは奥行きだ。それでいて、イエーツやバーネット、ジョイスの著作からの引用が、読者に何かを試している。その想像を、さらに飛躍させるのだ。結果、何度も繰り返し、何度も噛み締めるように読めることを、この作品は可能としている。一度目よりも二度目のほうが、二度目よりも三度目のほうが、より感動が深い。(つづく)2015/01/16
いちろく
15
お借りした本。コマ割りや雰囲気に驚きつつも最後まで読了。世界観を楽しむ作品は嫌いではないのですが、この作品については伝えたい事を理解出来たのか正直解らない。ただし、独特の作風で描かれる吉祥寺の風景や影の描写には惹かれる物があった。2015/03/22
∃.狂茶党
13
短編映画のよう。 実写でもアニメーションでもいいが、縦長のコマを多用し、少なめのセリフは、流れるよう。 大変テクニカルな漫画で、少ないト書きも、引用だったりする。 ある種の情景、気分を捉える。 ベタつかない人間ドラマ。 とてもスタイリッシュ。 だからと言って、情感に欠けることはなく、ふわっと包み込まれてしまう。 なんだか、技術レベルの高さに圧倒されてしまう。 そういうところに、意識持ってくのはよくないけど。 漫画家志望者とか読むと、絶望しちゃうんじゃないかな。 2023/05/20