出版社内容情報
藤子・F・不二雄の、ちょっと変わった味わいの作品を集めた異色短編集。SF的手法と鋭い風刺精神を存分に発揮し、大胆かつ繊細な構成で不可思議世界を描き出す。「藤子美学の世界」に、どっぷりと浸かれる作品集!
▼第1話/オヤジ・ロック▼第2話/じじぬき▼第3話/自分会議▼第4話/間引き▼第5話/3万3千平米▼第6話/劇画・オバQ▼第7話/ドジ田ドジ郎の幸運▼第8話/T・Mは絶対に▼第9話/ミノタウロスの皿●登場人物/オレ(故障した宇宙船の乗組員。地球型の惑星に不時着する)。ミノア(“本年度ミノタウロスの皿”の栄誉に輝く少女)。(第9話)●あらすじ/同居する息子夫婦と孫から、あからさまに邪険に扱われ、家での居場所もない老人の穴黒厳三は、そんな家族へのあてつけに雨の中、釣りに出かけてそのまま死んでしまう。やってきた天国で、亡き妻と再会した厳三だったが、「下界テレビ」で自分の通夜を見ているうちに家族のことが恋しくなり……(第2話)。▼乗っていた惑星間航行ロケットが故障し、生き残ったのはオレ1人。水、食料ともに底をついたが、救助艇がくるのは23日後だという。やっとの思いで不時着した地球型の惑星。そこには低い段階ながらも文明があり、ミノアというかわい子ちゃんとも出会うことができた。ところが、その文明というのが実は……(第9話)。
<ご注意>発売から長い年月を経ている商品で、在庫数がごく僅かです。在庫の中にはカバー等に汚れ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
75
「Casa BRUTUS 藤子・F・不二雄100」を読んだら、藤子不二雄のSFを読みたくなって、この本を本棚から引っ張り出した。藤子・F・不二雄さんのSFセンスと社会を見つめる確かさを感じる。皮肉な結末は、痛烈な風刺となる。表題作は、藤子さんの絵のタッチと残酷な世界観が効いている傑作。「劇画オバQ」は、自分の作品世界が大人になる悲しさを自ら描く大胆さに惹かれる。「ドジ田ドジ郎の幸運」は、唯一爽やかな結末。このシリーズあと2冊持っているので、続けて読んでみよう。2021/09/15
海猫
63
再読。「ドラえもん」や少年向けの短編と違って、苦ーい味わいがあるのが特徴の短編集。「自分会議」自分同士の醜い争いは見たくないと思った瞬間に、畳み込む絶品のオチ。「劇画・オバQ」子供の頃、Qちゃんが好きだっただけに大人目線で読むと切ない。ブラッドベリの短編「黒パン」と似た味わい。「ドジ田ドジ郎の幸運」短編として良く出来てるけど、それ以上にゴンスケのキャラが面白い。「ミノタウロスの皿」さすがの表題作。言葉が通じても会話が成立しない怖さ。理屈では理解できても、感情では納得できない。読者の価値観を揺さぶってくる。2021/03/25
sin
34
再読:)これぞサイエンスフィクション!藤子不二雄がSFのあらゆるガジェットを素材にして作り上げた作品の数々、いわゆる漫画版“世にも奇妙な物語”といったところ、中でも表題でもある“ミノタウロスの血”は、ブールの“猿の惑星”の原作が1963年発表で映画公開が1968年公開であるから、そこから着想を得たと思われるが食肉という要素を取り入れることで物語のメッセージ性が強く現れて秀逸である。その他の短編も小粒ながらピリリとしているが“劇画・オバQ”などはいつの時代のキャラクターに置き換えても通用する郷愁である。2015/03/08
GaGa
34
藤子不二雄(おそらくFの方)のSF短編集。表題作。異文化との間でのすれ違い。ラストのステーキがいいですな(笑)「自分会議」これはこれでタイムパラドックスを招いてしまいそうだが…とにかく全作品読んで古くない。つきのなさのぶれや、オヤジロックのセールスなども現代でも十分通じる。劇画「オバQ」も傑作だなあ。最後のオバQの台詞がとてもいい。2013/02/02
ジェミジェム
4
いろんなふしぎがつまったSF短編集。ドラえもんしか読んだことがなかったが、大人向けのこちらが氏の真骨頂か。仄暗さを湛えて迎える結末たちに複雑な余韻を抱く。読みながらいろいろな感想がぐるぐるしていたのに最後に待っていた表題作があまりに衝撃的でそれまでのぐるぐるはどこかへふっとんだ。今作全体はSF(すこしふしぎ)というより私にはだいぶふしぎだったが、内容の大きさと可愛い絵柄のミスマッチがいちばんの魅力で、やわらかくてこわい独特な世界へ連れて行ってくれる。石黒正数氏が影響を受けた人というのがよくわかる。2015/11/01