出版社内容情報
戦中、町子が学年誌に描いた幻の作品
2015年夏、小学館の地下資料室で戦中の自社出版物を調査したところ、子ども向け雑誌に掲載された長谷川町子の作品が多数見つかった。
昭和14年?18年春、町子19歳から23歳までの短い期間に描かれたもので、漫画あり、挿絵あり、なぞなぞのような企画ものまで、バラエティに富んだ内容である。
進軍ラッパが高らかに鳴り、軍靴の響きが日に日に近付いてくる中、町子は一貫して、明るく朗らかな人々の日常と希望を描き続けた。そして、その作品には時々、笑いのオブラートに包んだ町子の戦争に対するシニカルなまなざしも感じられる。後にサザエさんで時代を鮮やかに切り取った町子。その才能の萌芽を知る貴重な資料でもある。
また、ドラマで何度もフネさんを演じ、今も第一線で活躍する女優・吉行和子さんが、町子作品に寄せて語る当時の思い出は、同じように父親不在のまま戦中を生き抜いた長谷川家の歴史と重なる。
さらに、町子の姉で、姉妹社の社長として陰で町子を支え続けた姉・毬子の見事な挿絵も紹介。ふたりを身近で観てきた長谷川町子美術館の館長の話から、互いに「お姉さま」「町子ちゃん」と呼び合ったふたりの作品と人生に迫る。
【編集担当からのおすすめ情報】
厳しいこの時代に町子は、朗らかで穏やかな日常を描き続けました。その姿勢は戦後も変わること無く、やがてあの、みんながよく知る愉快な家族が誕生します。
この本の中には、あの一家と同じ笑いと温もりがあり、あわてん坊のあの人や食いしん坊のあの子が隠れています。
長谷川 町子［ハセガワ マチコ］
著・文・その他
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
40
長谷川町子氏が昭和14年〜17年辺りに、小学館の幼年・小学生向け雑誌に描いていた漫画を集めた本。徐々に軍靴の音高くなりつつある時勢柄、慰問袋や傷痍軍人などのモチーフが多出するものの、必ず笑いに繋げる独特の温かみは続いている。動物漫画はとても可愛くて、その絵を使ったグッズが欲しくなる。驚いたのはドラマ「マー姉ちゃん」の主人公となった姉毬子さんの画才。しっかりしたデッサンと構図の技術に裏付けられた素晴らしい挿絵が数点挙げられている。絵筆を置いたのは本当に残念だと思った。2022/11/16
kiho
13
戦時中というある意味特異な時代と、その中での子どもたちの明るさ、町子さんの温かな眼差しが見えてくる⭐笑える言葉が結構あり…この時代だったからなのか…。2016/10/30
印度 洋一郎
6
「サザエさん」の作者が戦時中(収録作の時代範囲は昭和14年～18年)に小学館の児童誌などに寄稿した漫画やイラストを収録した作品集。近年まで埋もれていたものらしい。全体的にほのぼのした作風ながらも、「慰問袋」や「傷痍軍人への慰問」等執筆された時代を背景にした時局を感じさせる内容もある。中には後の「サザエさん」のキャラの原型のような子供達も登場し、サザエさんとカツオの幼い時の姿のような姉弟もいる。そして、動物キャラでは子熊たちが実にかわいいし、挿絵ではうって変わって端正な人物描写も見せている。2021/12/25
