出版社内容情報
恐怖が生まれ増殖する場所は、いつも「学校」だった――。
繰り返しながら進化する「学校の怪談」をめぐる論考集。
90年代にシリーズの刊行が始まり、一躍ベストセラーとなった『学校の怪談』。
コミカライズやアニメ化、映画化を経て、無数の学校の怪談が社会へと広がっていった。
ブームから30年、その血脈は日本のホラーシーンにどのように受け継がれているのか。
学校は、子どもたちは、今どのように語りの場を形成しているのか。
教育学、民俗学、漫画、文芸……あらゆる視点から「学校の怪談」を再照射する一冊。
目次
1章 「学校の怪談」はどこから来て、どこへ向かうのか ―― 一柳廣孝
2章 「学校の怪談」と戦争の影 ―― 吉田悠軌
3章 「学校の怪談」ブームのさきがけ
ホラー雑誌と怪談投稿文化 ―― 廣田龍平
4章 令和によみがえる『地獄先生ぬ~べ~』 ―― 真倉翔 岡野剛
5章 「大学怪談」の世界 ―― 吉田悠軌
6章 「学校の怪談」を調査する ―― 朝里樹
7章 特別寄稿 “つなぐ”学校の怪談 ―― 吉岡一志
8章 ブックガイド 現代ホラー小説は学校怪談をどう描いてきたか ―― 朝宮運河
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
41
ローカルに発生した学校の怪談は、やがてブームを巻き起こすまでに至る。怪談の「場」は他にもありうるのに、なぜ特に学校が注目されたのか。記述や対談を読みながら、ずっと気になっていたのはそれである。学校・教育というシステムに創作や伝承の原因を求めるのは当然で、さらに論を掘り下げると興味深い。「学校の怪談」ブーム以前にも「七不思議」を記事にした学習雑誌(中学生が読者)はあったから、それで初めて知った子どももあったはず。その子らの投稿など、情報のキャッチボールがあったのなら、コミュニケーション論の視点が必須だろう。2025/07/05
XX
13
タイトルとは真逆に、学校の怪談そのものは無くならなくても研究者にとっての「学校の怪談」というコンテンツの存続はかなり危ういのではないかと思った。松谷みよ子が始めて常光徹が完成させた学校の怪談、現在ではコンプラ関係や教師の多忙によって学校内で教師から怪談が語られる機会が激減、またメディアやSNSによる過剰な拡散で虚実の判断が難しくなってしまった上にどこまでを学校の怪談としてカテゴライズするのか判断が難しくなっている現状。子供たちが生き生きと語る学校の怪談の現場が見えにくくなっている。研究者には正念場かな。2025/09/01
まさ☆( ^ω^ )♬
11
「学校の怪談」に関する論考と対談が収録されていて、かなりしっかりと考察されている良書。学校の怪談がどのように広まって行ったのか、学校の怪談には脅威からの回避が設定されているなど、とても興味深いものばかりだ。個人的には90年代は既に社会人になっており、ドンピシャではないちょっと通り過ぎちゃった世代。口裂け女で止まってた。花子さんなど、あ〜何か話題になってるねぇみたいな感じだった。これは何とも勿体無い事をしてしまったな。今からでも遅くはないので、怪談集を色々と読んでみたいと思った。2025/08/14
おおかみ
10
編著者の吉田悠軌に加え、一柳廣孝、廣田龍平、朝里樹ら信頼の書き手が揃い踏み。好事家にとってはそれだけで読み応えがある。「学校の怪談」がどのように受容され、変容してきたのかを各々の視点で考察するわけだが、掛け値無しに超面白い。メディア論、情報論、教育論など多様な論点を抱えるきわめて刺激的な領域だと感じた。学校という存在が子どもたちにとっての一つのメディアとして機能してきたことがよく解る。だから学校のあり方が変われば怪談も変わることになる。怪談は時代を反映し続けてきたのだ。2025/09/12
いりあ
9
怪談研究家 吉田悠軌による「学校の怪談」に関する論考集。90年代に社会現象になった「学校の怪談」の現在を教育学、民俗学、漫画、文芸など様々なな視点で考察しています。新書ですが非常に読み応えのある内容になっています。私は世代なので、教師から怪談話とかを聞いたこともありますし、放課後、教室に残ってこっくりさんなどをやっていました。夏になればTVでも特集が組まれたりと、触れる機会が多いジャンルでした。これから環境が変わっても、姿形を変えながらひっそりと消えることはないと思います。観測はしにくくなりそうですが。2025/08/01