内容説明
お前とふたりだけの話ばしたかったとたい―。ある日、わたしに届いた母の声のテープが、日本全体が貧しく、家族同士の体温が熱かったあの時代の記憶を呼び覚ます―。『悩む力』から二年ぶり、著者初の自伝的小説。
著者等紹介
姜尚中[カンサンジュン]
1950年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。東京大学大学院情報学環教授。専攻は政治学・政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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出版社内容情報
激動の時代を生きた母の生涯を綴る。
著者初の自伝的長編小説。
「わたしは幸せだろかいね。うん、幸せたい。そうたい、幸せたい」
穏やかな老後を迎え、そう一人ごちていた母。しかし十六の春、婚約者を頼って植民地だった朝鮮半島から単身日本に渡った母の人生には、底知れぬ苦難が秘められていた。
時に感情を爆発させ、時に少女のようなあどけなさを見せた母。その逝去をきっかけに、著者は母の人生と、自らの家族の歴史を振り返る。それは戦中・戦後、日本全体がまだ貧しかったころ、そして人々の間の距離が短く、家族の絆が熱かった時代の記憶だった。
「在日」として生きてきた親子二代の軌跡を辿り、母とは、そして家族とは何かをストレートに問う、感動の一冊。