内容説明
徳川三代将軍家光の御前を退いてから十年、三十歳の十兵衛に新たな使命が待っていた。向かうは…日本諸州の乱れを未然に防いできた柳生家が、まだ手をつけていない場所だった。
著者等紹介
多田容子[タダヨウコ]
1971年、高松市生まれ、尼崎市に育つ。京都大学経済学部卒業。1999年、剣豪小説『双眼』(講談社)でデビュー、注目を浴びる。柳生新陰流二蓋笠会会員。柳生新陰流兵法・小転中伝(こまろばしちゅうでん)、居合道三段、手裏剣術も嗜む。2004年、兵庫県芸術奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
17
柳生十兵衛が徳川三代将軍家光の御前を退いてから10年。30歳の十兵衛に新たな使命がまっていた。向かうは長崎。日本諸州の歪みを治し、乱れを未然に防いできた柳生家が、まだ手をつけていない場所だった。「神によって十兵衛を救う」という切支丹の由平。彼らの中に身を置きつつ十兵衛がはたす公儀の使命とは。長崎を出た十兵衛が次に向かうは出羽庄内。浪人たちの浪藉から助けた美紅との出会い。切らず、取らず、勝たず、負けざる…柳生の兵法のもと、無刀行脚を続け、多くの門人を育てた十兵衛の活躍と、心の闇を描いた書下ろし小説。2006/09/30
ワッピー
6
戦国の終末期から治国への移行期に、柳生一門の果たした役割を多田さんならではの視点で描いています。十兵衛自身の成長、但馬や家光との関係、そして負け組の浪人たちとのかかわりなど実に味わい深い描写の中でも、十兵衛が浪人たちに説く「三学円太刀」の切らない間合と切る間合の使い分けなどは鳥肌が立つわかりやすさです。修行に完成はなく、通り過ぎる過程があるのみというあたりは、著者自身が修行者として通り抜けてこられた経験に裏打ちされているのではないかと、修行経験のないワッピーは勝手に思ってしまいます。2015/12/31
こ86
2
求道者柳生十兵衛という印象を受けました。宗矩が兵法の鬼と本編で言われているように怖いです。十兵衛を三日目で治したあのやり方は本当に怖い。家光と十兵衛の間柄を密に描こうとする方は、友矩をどうするかに悩むなと、多田さん以外の作家の作品をいくつか読んで思った。2015/03/12