内容説明
秀吉も、明智光秀も、森蘭丸も…誰もがみんな、信長の首を愛してた。リセットを繰り返しても繰り返しても、あっと言う間に斬り落とされる信長の首。それは誰もが信長の首を愛してたから…。シュールでエロティックな快作「首の信長」をはじめ、日本史の沃野を縦横に駆けめぐる驚天動地の連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
80
イベント『2021年、今年読んだ本はこれだ!』のinugami4649さんのオススメ本。おちゃらけた軽さとサクサク読める疾走感の短編8作を収録。表題作で「どうやら武田勢はみな信長の首に対して何やら性的な妄想を抱いているらしかった。みな目を血走らせて信長の姿を追い求めている。中には興奮のあまりだろう、口から泡を吹いている者もいる。」という箇所からも普通と違う感覚が楽しめる。2021/12/30
藤枝梅安
24
「小説すばる」に掲載された8編をまとめたもの。いずれも、現代人が過去にタイムスリップし、その時代のある事件や事象について、現代人の視点から面白おかしく事件を描いてみせる。面白いには面白いが、現代人の視点で説明すること自体に無理があり、「そうかなぁ」と思う部分が多かった。2011/01/30
九鳥
22
何だこりゃ。へんてこ日本史改変短編集。妄想力と教養の無駄遣い。読みながら何度も「誰得」の二字が頭をよぎった。これは歴史小説のカテゴリに入れると、歴史小説好きがうっかり読んで腹を立てると思うので注意が必要だと思う。ペテン師空海と陰謀家最澄の「聖者伝」と、誰もが美しく妖艶な信長の首を狙っているSF「首の信長」が個人的に楽しめた。2009/12/07
三柴ゆよし
10
やはり白眉は表題作「信長の首」。誰もがそれを愛し、誰もがそれを犯したがる、セックス・アピールの権化。それが信長の首。とにかく弱くて、無闇と惨殺されまくる信長に嗜虐的な魅力をおぼえる、歴史改竄SFの傑作。一人称「俺」による軽妙な語りも、筒井康隆のスラップスティック劇を髣髴させて、実に素晴らしい。他には空海と最澄の熾烈な(?)権力闘争を描く「聖者伝」、タイトルの出オチっぷりがすごい「24人の稗田阿礼」など、なかなかの佳作揃い。小林恭二はどちらかといえば長篇の人だと思うが、この短篇集は良かった。2011/05/14
明智紫苑
5
あくまでも「歴史・時代小説」のパロディね。個人的にはどうも好きになれない話が2篇あるけど、作品集としては読む価値があると思う。2015/06/06