内容説明
「ぼくは行くよ」と語り手は言う。でも、どこへ?北極へ、南仏へ、なにもないガレージへ。軽やかに錯綜する物語の糸が、やがてその空白の行き先をひとつに絞っていく。災厄を呼ぶ美女と善悪のコミカルな変わり身。エシュノーズの話術がもっともまろやかにブレンドされた、円環するロードムービー小説の快作。ゴンクール賞受賞作。
著者等紹介
エシュノーズ,ジャン[エシュノーズ,ジャン][Echenoz,Jean]
1948年、南仏オランジュに生まれる。パリ在住。79年「グリニッジ子午線」でデビュー。83年の第2作「チェロキー」でメディシス賞受賞。99年、8作目の長編小説である『ぼくは行くよ』でゴンクール賞受賞
青木真紀子[アオキマキコ]
1959年生まれ。国際基督教大学卒業。東京大学大学院博士課程単位取得退了。翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
S.Mori
20
主人公のフェレールは一攫千金を目論んで、北極に難破船を探しに行きます。冒険小説のように始まるのですが、予想外のことが次々と起こり、彼は苦境に追い込まれてしまいます。フェレールはどうしようもない女好きで、魅力的な女性と知り合いになれるのですが、こちらの方も思うようにいきません。題の「ぼくは行くよ」という言葉が印象に残ります。第一の意味は北極に冒険に行くということですが、結末で読むともっと深い意味がこめられていることが分かり、感動が湧きあがってきます。2020/02/12
泉を乱す
11
ゴンクール賞作品って意識して読んだのは初めてかもしれない!ミステリー、ロマンス、美術、地理といろんな要素が詰まった緻密な面白作品。2021/04/13
きゅー
6
あまり良い印象は受けなかった。良くも悪くもフランス的で軽妙、洒脱。どこまで読み進めても重みを感じない作品だ。ストーリー展開には不自然な部分が散見するし、登場人物の中にはそもそも登場した理由がよくわからない者もいる。本作はゴンクール賞を受賞しているが、どんなところが評価されたのか気になる。またこれは編集者の問題だけど、登場人物紹介ページで激しいネタばらしをしているのはいかがなものだろうか。普通に考えれば、それは絶対に隠しておくような話なのに。2012/05/10
Tonco
2
久しぶりのフランスの小説。エシュノーズという名前は聞いたことがあったけど 読むのは初めて。この作品を最初に読んで良かったと思う。テンポがあって 楽しく読める。なんというのか 空想的というか 雲をつかむ様なというか 作者の世界がよく出来上がっている。実験的でもあり フランス文学の中で とても好きなスタイル。翻訳もとても良い。原文でも読みたいな。2017/02/10
mikan
1
同著者の「ラヴェル」が面白かったので読んでみた。この人の文体は独特なんだけど、流麗で読みやすいし、皮肉な言い回しが段々と癖になる。人物の描き方も、人物の内面をそのまま描くことはなくて、あくまで第三者視点からの観察を淡々と描いているようで、面白いなと思った。その副作用か、主人公にもほとんど感情移入できずに読み終わってしまったけど。。2019/12/10