出版社内容情報
これはBBC放送が一九九三年にこの問題を取り上げて作った『男性への攻撃』(日本ではその日本語版が「精子が減ってゆく」と題して、NHKのBS放送で流されたし、CS放送のBBCでも同じ日本語版が何度か放送されている)という番組の製作者がその内容をもとに、さらに取材をつみ重ねて本にしたものである.....。(立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』205頁、より)
内容説明
「内分泌かく乱物質」またの名を“環境ホルモン”。現在私たちが日常的に接しているありふれた化学物質の多くが疑われ始めている。環境中に存在して生体に偽のホルモンとして作用するものは、わかっているだけで70種類。すでに世界には8万種類を超える合成化学物質が氾濫している。90年代になって急浮上したこのショッキングな事実を、ベテラン・ジャーナリストの眼でていねいに検証した衝撃のサイエンス・ノンフィクション。
目次
第1章 最初の警告
第2章 パラドックス
第3章 エストロゲンの大海
第4章 第一容疑者
第5章 パンドラの箱
第6章 英国の秘密実験
第7章 増加する容疑者たち
第8章 暴露ルート
第9章 化学物質の宇宙
第10章 「不明確」のカードを操る
第11章 人類の代償
第12章 反応
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
54
雌雄は生物の種の保存力を高める知恵の一つです。雌雄同体の方が効率よく数を増やせるにも拘らず、生殖行為という「面倒な」プロセスを踏んでいます。 またそれに伴う悲喜交々のドラマが生まれます。特に恋愛というテーマは歴史文化、社会の全てに深く関わっています。 メス化するとはオスの存在意義が薄れていくことであり、種が衰微していくことでもある。性とは背の高さなどの個性と言い切りがたい要素です。 オスは薄毛に悩み、メスは脱毛に大金をつぎ込む。 両者が車内内広告が並んでいるのに苦笑せざるを得ない。
Willie the Wildcat
32
環境ホルモン。自然界からのMSGを如何に咀嚼するか。人類自らが蒔いた種が巻き起こす多次元方程式。明快な解は無くも、可能性は明確。興味深いのが、権威と先入観の壁。スキャケベク教授の件が典型。論文の客観性はもちろん、先見性への懐の広さと深さも鍵か。DES、DDT、PCBなど、常識の非常識が怖い。故に、情報公開を含めたFDAや厚生労働省の責任は重い。新薬承認のスピード感と副作用・・・。慎重にならざるを得ないもの事実。0/100の世界は無く、リスクを踏まえた選択。物質主義における妥協の産物か・・・。(汗)2015/08/26
サメ社会学者Ricky
3
性器異常や生殖能力の低下など、有性生殖生物としては色々と身の毛のよだつ恐怖が、人間の生み出した身近な化学物質によって起こっているという、どんなホラーより怖い実話。もちろん、全てのプラスチックや汚染物質を排除することはできない。経済的利害などという馬鹿げた理由で対策を怠るのは論外だが、このような問題の恐怖から逃れて発展したいという切実な願いそのものが、すでに生き物として傲慢なのかもしれない。2014/05/14
Nobuko
2
ゼミの教授が興味深かった本として、紹介。 有機栽培の研究を始めたところだったので、大きな動機付けに。 便利だ、安心だ、消毒だ、と、当たり前のように使用しているものが、何年後、何十年後の世界に影響を及ぼす。 今、ips細胞の研究に一気に火がついているが、それに限らず、全ての研究者は、目先の利益、結果に捉われず、科学と自然は表裏一体であることを、未来の人類に及ぼす影響までを考えて、研究を進めて欲しいものだ。
アルデバラン
2
環境ホルモンについては、教科書に載っていた。だが、実際にどのような研究がされていたのかを知ると、教科書の内容が如何に乏しいものだったのかがよく分かる。恐らく、環境ホルモンがなぜ問題視されるのか、その実態を知る一般人は非常に少ないだろう。この本は、化学物質名や人名、雑誌名などでたくさんのカタカナが登場し、内容も一部重複するので、少し読みにくい。だが、大学入学程度の知識があれば、文系理系関係なく読める本である。最新情報も加えつつ、改訂されるようなことがあれば、もっと読まれてもいい本である。日本版も出て欲しい。2011/08/24