内容説明
運命の日、スカモン船長と少年水夫ジョンは、伝説の楽園を発見した。母鯨が子を産みに、老いた鯨が安らかに死ぬために帰るその湾の渇湖(ラグーン)を。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
21
エイハブなきあとの捕鯨世界を描いた『白鯨』の精神的続篇である。メルヴィルの著作においては平等あるいは追随する関係にあった鯨と人間のパワーバランスは、本書――『白鯨』の約十年後、捕鯨砲や電気銛などテクノロジーが発展しつつも翳りを見せ始めた当時の捕鯨世界――では完全に覆されたことがはっきりと示されている。鯨が集まり仔を産み落とす静謐な潟湖は殺戮の場と化し、血に染まった捕鯨船員たちが回想の果てに希求するのは、かつてイシュメールが鯨と契ったある種の聖性に満ちた関係であり、それはもはや永久に失われてしまっている。2016/09/03
YO)))
17
二人の老人の追想―鯨の楽園である潟湖の発見者,スカモン船長と,彼の船の水夫であったジョン(元)少年―が奏でるのは,失われてしまった"世界の子宮"に捧げる,ノスタルジーのポリフォニー."探索者"は,追い求めた世界の神秘を眺めるだけでは飽き足らず,その神秘を白日の下に曝すことで,自ら破壊者ともなってしまう.その宿命的なジレンマ,圧倒的で残酷な時間の不可逆性が,言いようもなく切ない.2014/05/02
ひろた
5
幼いころ、自宅の庭につくられた大きな蟻の巣を蹂躙した。巨大な「蟻の楽園」を見つけて熱に浮かされたか、子どものイノセンス(純真さ)のなせる業か、いま思うとなかなかに惨たらしい方法でその楽園を踏みにじった。読み終わってそんなことを思い出した。最近読んだ本に「アメリカ人はイノセンスが大好き」という記述があった。本書を読んで「なるほど」と思った。19世紀の中ごろにアメリカ大陸における捕鯨は隆盛を極めた。自国の鯨を取り尽すと、日本の海洋資源を求め、8000キロを越えてペリーは日本にやってきた。2015/10/14
takao
2
ふむ2024/08/10
より
1
★★★