内容説明
自分が受けた屈辱と悲惨な体験を、わが子に味わわせたくない。白人捕獲人の姿を見たとき、逃亡奴隷セスが何か考えたとしたら、そのことだった。そして…。ピュリッツアー賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
255
上巻ではそれほどでもなかったが、ここ下巻にいたってビラヴドの存在が大きな比重を占めるようになる。ビラヴドの実体化は、私には最後まで違和感が残ったが、これこそが本書の小説としての最大の特徴であり、モリスンが黒人作家として是非とも書かねばならなかったことなのだろう。すなわち、けっして言葉にはならない、あるいは言葉を奪われた者たちの苦悩や抹殺された存在であった彼ら黒人たちの象徴がビラヴドであったのだ。そして、そこには作家としてのモリスンのジレンマもまた投影されていた。支配者の言語たる英語で書くしかないという。2015/12/01
Shintaro
63
アメイジング・グレイスが聴こえてきた。ビラヴドは幽霊のかたちをしたトニ・モリスン、否、黒人の語り部だったのか。花を追って北に行け。川を渡ればそこは自由州だ。自由への逃走は、なぜか僕の前世の記憶が共鳴する。しかし、悪名高い逃亡奴隷法により追手が迫る。あったのだ、最愛の娘を愛することができなかった時代が。200年の受難の歴史、伝えなければいけない、というモリスンの歴史的使命感は僕に伝わり、泣けてきました。若い人にこそ読んでもらいたい。文学の力、体感して下さい。ピューリッツアー賞だけでなく、平和賞も捧げたい。2016/04/30
キムチ
50
「青い眼が・」で潜り抜けたモリスンの映像的幻想世界。やはり、感情がボロボロに。日本国で日本人が黒人奴隷200年余の屈辱に満ちた差別の歴史を想いいるには限界がある。とはいえコルソンホワイトヘッドの「地下鉄道」を読んだ事が下地になった。実際起きた事件を題材としているだけにフィクションに重みが加わっている。作家モリスンの功績はこれからも評価は上昇することは論を待たぬと思われる。「愛されし者ビラヴド」そして124番地に凝縮された女、母親、そして命への想いが霊となって木霊となり彷徨いは続いて居る。2024/03/10
giraffer SACHIヽ(*^^*)ノ少しずつですが毎日読んでます!
27
奴隷制度での数々の仕打ち、黒人の生活についての(私の頭で)処理しきれないぐらいのたくさんの描写で、うまく感想がまとまりません。 引き続き原書で“挑戦読書”してみようと思います。2016/10/31
みや
9
奴隷解放後の元黒人奴隷たちのお話。テーマは暗くて重いけれど、ファンタジー要素が強いため、自然とすらすら読むことができた。だが、最後は心にずっしりくる。前半はさっぱり意味がわからなくて、翻訳が下手なのではないかと何度も読むのを諦めてしまいそうになった。下巻に入ってからは伏線として匂わされていた過去がどんどん明らかになっていき、そこからは一気に惹きこまれた。そして、同時にそこから物語は重くなっっていった。もしファンタジーでなければ、恐ろしいほどにえぐい作品。スプラッタ映画なんて比じゃないくらいえぐい。2016/04/13
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