内容説明
子供たちは、美しい地球を求めて旅立った。海をさがしに行く少年。空をさがしに行く少女。河をさがしに行く少年…。そうだ、まだ僕たちは人間をあきらめてはいけなかった。この一冊、いま新しい「星の王子さま」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たーぼー
45
自然の中での戯れ。大人達との会話。自分だけの秘密基地。ここには成長するにつれ失われてゆく童心がいっぱい詰め込まれている。叙情的に過ぎるが、時には外に向けられたピュアな世界で心を洗われるのもいい。特に「モンド」は好み。この子はいったいどこから来たのか。どこへ帰るのか。彼は答えず優しく微笑み返すだけ。砂浜に両膝を抱えて海を眺めるのが好きな子。水平線の向こうの貨物船はどこへ行くのかな。今でも南仏ニースのどこかの街角で駆けだす子ども達に混じり、彼が居るかもしれない。すぐにわかるよ。彼独特の「斜めの走り方」だから。2015/04/27
rou
12
少年や少女たちの繊細な野生と自然の交歓が描かれる。その交歓は『物質的恍惚』のように輝きに溢れた美が原子レベルにまで分解され、読む者を詩人クレジオの視線に連れていく。子どもたちは「私」の境界を忘れ、波の白い泡に、青空の粒子に同化していく。子どもの頃に確かにもっていた忘我の作法を詩人の視線から再び経験したければ、再びこの書を手にするとよい。何度も辿って年を越した。2018/01/01
志田健治
2
少年少女の感性、それを文字に乗せている。人間特有の感情は切り捨て、この世界と、自然と、野生とつながる感性のみを浮き上がらせる。このような表現をする作家は少ない。いわゆる小説家とは一線を画してもよいと思う。いや、本来の小説家はこういう文章を書くものなのかもしれない。そこにはドラマツルギーはいらない。