出版社内容情報
からだは傷みを忘れない――たとえ肌がなめらかさを取り戻そうとも。
「傷」をめぐる10の物語を通して「癒える」とは何かを問いかける、切々とした疼きとふくよかな余韻に満ちた短編小説集。
「みんな、皮膚の下に流れている赤を忘れて暮らしている」。ある日を境に、「私」は高校のクラスメイト全員から「存在しない者」とされてしまい――「竜舌蘭」
「傷が、いつの日かよみがえってあなたを壊してしまわないよう、わたしはずっと祈り続けます」。公園で「わたし」が「あなた」を見守る理由は――「グリフィスの傷」
「瞬きを、する。このまぶたに傷をつけてくれたひとのことをおもう」。「あたし」は「さやちゃん先生」をめがけて、渋谷の街を駆け抜ける――「まぶたの光」
……ほか、からだに刻まれた傷を精緻にとらえた短編10作を収録。
【著者略歴】
千早茜(ちはや・あかね)
1979年北海道生まれ。幼少期をアフリカで過ごす。立命館大学文学部卒業。2008年『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。翌年、同作にて第37回泉鏡花文学賞を受賞。13年『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で第6回渡辺淳一文学賞、23年『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞。著書に、『ひきなみ』『こりずに わるい食べもの』『赤い月の香り』『マリエ』など多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
akiᵕ̈*
20
傷は何かを思い出す印であったり、戒める印であったり、歓びの印であったり、共に寄り添っていく印であったり、その人の生活の中でふとついてしまったかもしれないそれは、そこに馳せる思いでこんなにも違うものになるのだと、この10話の短編は思わせてくれる。目に見えない傷こそいつまでも深い所に居続け、ボディブローのようにジワジワとその効力を発揮し、そのダメージは大きいのかもしれない。2024/04/27
みかん
4
傷に纏わる10話の短篇集。わたしは前半の方の物語が好みだった。グリフィスって誰にでもあるのかもしれない。2024/04/27
かば子
0
後半のお話が好き。特に「グリフィスの傷」。最後の「まぶたの光」も。私の体の傷あとについて、考えちゃいました。2024/04/27