出版社内容情報
「平穏な生活のために、姉を殺すことにしました」
三月生まれの倉石麻友と、四月生まれの姉・凛。
ふたりは生まれの近い年子のため、同学年として同じ高校に入学した。高校二年生になった春、麻友は姉を殺す計画を立てる。姉は誰もが振り返るような美少女だが、実は意地悪で残酷。幼いころからいじめなどの問題行動を繰り返していた。
ずっと「毒姉」との決別を夢想しては敗れてきた妹の、試行錯誤の行方は?
そして、妹自身が抱え続ける罪とは――。
思い込みから解き放たれ、自由へと向かう物語。
【著者略歴】
渡辺 優(わたなべ・ゆう)
1987年宮城県生まれ。大学卒業後、仕事のかたわら小説を執筆。2015年に「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。著書に『自由なサメと人間たちの夢』、『アイドル 地下にうごめく星』がある。
内容説明
姉は美人で頭が良く、そして邪悪だった―。幼い頃から「毒姉」に悩まされてきた妹の最終計画の行方とは。痛快な毒を振りまきつつ、自由へと向かう青春長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
121
年子であり同じ学年の姉妹。姉は誰が見ても際立って美しく運動勉強共にできる。それに比べ妹は地味。だが、姉はまれに見る性悪女だった。人の欠点を誇張して言い、見下し笑い者にするといういじめをターゲットを見つけては繰り返す。姉によって妹の高校生活も不安がつきまとうが、親も姉の前では何も言うことができない。妹は姉を嫌い、殺すしかないと思うが…。夢と現実がわかりにくい部分があったが、結局距離を置くしかない。もし、離れたくても離れられない成人した姉妹ならもっと怖い展開だったかも。2021/06/09
sayuri
109
「平穏な生活のために、姉を殺すことにしました」帯からスリリングなサスペンスを想像していたが蓋を開ければ毒姉に悩まされ続けて来た妹の心情を淡々と綴った家族小説だった。姉の倉石凜は4月生まれ、妹の麻友は3月生まれ、年子で生まれクラスは違えど同学年として同じ高校に通っている。綺麗で頭脳明晰、運動神経も良い姉の凜だが幼い頃から邪悪で残酷な面を持っていた。姉に忖度しながら麻友に芽生える殺意。ドキドキしながら読み進めるも大きな展開もどんでん返しもなく全体を通して平坦な印象が残った。姉妹の両親に不甲斐なさを感じた読後。2020/09/26
fwhd8325
101
思い出せないのだけど、こんな映画がを見たことがあるような気がします。映画が放っている空気は乾いているんだけど、どこか一カ所だけ拭っても拭ってもとれない湿り気があるような。そんな不思議な感覚の物語でした。姉も妹もどちらも、所詮姉妹じゃないか。2020/11/29
ゆみねこ
85
同じ学年の年子の女子高生姉妹。美しく優秀だが性悪な姉と姉を殺してしまいたいと思い詰める妹。姉妹ってややこしい。2021/09/08
キンモクセイ
65
悪いってもんじゃない。最悪だ。「行ける気がする。今日こそやれる気がする...安全で、穏やかで、揺るぎない希望に満ちた世界だ。」年子の姉妹で元凶な姉。邪悪な姉。いつも殺したいと思っている。それで酷い人間だと思われても全然いいです。私は善良な人間じゃありません。こんな辛い心情ばかり綴られ、容姿はお人形さんみたいに愛らしい姉の残酷な態度にげんなりするけど、妹の心の毒舌ツッコミが面白い。姉の1人絶対君主王国が崩壊すると私も変わった。こいつほんとぶっ殺してやりたいな。でもそれはしない。さあ、新しい生活が始まる。2020/10/01