出版社内容情報
みんな、普通の人だった──。作家・浅田次郎のライフワークである「戦争」をテーマにした短編集。名もなき一般市民の目線から、戦中戦後の東京の風景を描き出す。人情ドラマが光る全6編。
浅田 次郎[アサダジロウ]
内容説明
二度と戻れぬ、遠きふるさと。戦争によって引き裂かれた、男たちの運命とは。名もなき人々の矜持ある生を描く小説集。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞を受賞。日本ペンクラブ会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
269
8月の1冊目は、浅田次郎の最新連作短編集。浅田次郎は、ほとんどの作品を読んでいる作家の一人です。本作は8月に読むには打って付けの「戦争」がテーマの作品集。著者の巧さが光り、物悲しさが漂います。特にオススメは表題作の「歸郷」と「無言歌」です。やっぱり戦争物にも「愛」が必要なんだと思います。2016/08/01
おしゃべりメガネ
266
もう装丁とタイトルを見ただけで既に涙が出そうになりますよね。見たまんまの‘戦争’をテーマに戦中戦後を書いた6編の短編集です。とにかくどの作品も重厚です。喜怒哀楽をこうも見事に詰め込んで違和感なく、まとめあげて綴るさすがは浅田さんです。表題作の男女の何とも言えないキモチの距離感が絶妙です。「鉄の沈黙」の戦闘シーンの緊迫感はまるで映像を観ているかのようでした。「夜の遊園地」は浅田さんお得意の親子愛で涙が溢れ出てきます。「不寝番」は永遠の名作『鉄道屋』を彷彿させてくれます。他2編もハズレはなく、お見事でした。2016/07/30
馨
238
戦争小説の短編集。戦後の話が多かったです。戦後の復員兵や女性たちの生きることの大変さ難しさがとてもわかりました。戦後を立て直してくれた日本人の先人の方々の苦労があっての今の日本があることを忘れてはいけないと思います。表題作はとても良かったです。2016/09/11
KAZOO
210
久しぶりの浅田次郎さんの新作で、戦争にからんだ人々の戦後の生き様をつづった物語です。6つの短編が収められていて私より年上の人々にとってはかなり身近に感じられるのかもしれません。ただ最近の若い人びとがこのような作品を好むのかはかなり疑問符がつきます。浅田さんの「角筈にて」に似ているような印象を受けました。私にとってはいい作品でほろりとさせてくれる部分が幾度かありました。2017/04/26
yoshida
200
戦争で狂う人々の日常。短編6編。兵士それぞれに人生が、家族が、故郷がある。明日をも知れぬ状況で彼等の想いに触れると、重く切ない気持ちで苦しくなる。「帰郷」の苦しさと再生への一歩。実際にこのようなケースはあったようだ。戦地から九死に一生を得て帰郷した男を待つ悲しさ。最後に救いがある。「無言歌」は切ない。故障で沈んだ潜航艇。薄れゆく酸素。死が迫るなか、途切れがちな意識で見る夢。戦争がなければ続いた幸福な日常。その儚さ。日常を奪い取る戦争という暴力。涙せずには読めない。戦争を無くすことが私たちの使命だと思う。2019/10/20