出版社内容情報
少女がダライ・ラマのように転生するという、ネパールに実在する生き神・クマリ。この処女神を中心に、日本の観音信仰にもつながる女神信仰の謎と系譜を、長年の調査研究に基づいて解き明かす。
内容説明
慈愛と破壊、母性と処女性…相反する属性を宿す生き神。少女の姿をした神は、国王をも跪かせる霊力を持つ―。ダライ・ラマのように輪廻転生する、ネパールのクマリ。神となる少女から、観音菩薩、マリアなど女神信仰の系譜を読み解く。長期フィールドワークにもとづく渾身作。
目次
処女神クマリとの出会い
インドラの祭り(インドラジャトラ)
百年の孤独
女神の源流を求めて
仏教とは何か
美人の条件
ロリータ
祭りの全体像
美の化身アプロディテ
ロイヤル・クマリ〔ほか〕
著者等紹介
植島啓司[ウエシマケイジ]
1947年東京生まれ。宗教人類学者。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、ミルチャ・エリアーデらのもとで研究する。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。70年代から国内外で宗教人類学調査を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
梟をめぐる読書
23
「クマリ」という処女の生き神の風習が今なお残存する国、ネパール。そこでは一般の家庭から選ばれた3、4歳の子供が王の権威を超えて崇拝され、しかし13、4歳(初潮の年齢)を迎える頃には役目を終えて降ろされるのだという。なぜ少女なのか。そしてなぜ、初潮を迎えるとその力は失われてしまうのか。作者はその起源を世界中で見られる女神信仰の中に探しつつ、一方で処女崇拝的なサブカルチャー作品群(ロリータ、エコール、澁澤龍彦…)をも自在に引用してみせる。文化人類学的な著作としては、ちょっと見ない著述のスタイル。引き込まれる。2014/12/15
フクミミ
15
何年か前にテレビ番組で(BSだったか)ロイヤル・クマリを引退した少女のその後・・のような番組を見た記憶がある。 その記憶がこの本を手に取らせた一因でもある。 煌びやかな衣装を身に付けた処女神・クマリ。ネパールという土地のせいか、幼女の生き神様がとても美しくエキゾチックである。掲載された写真は選び抜かれた幼女達なので、皆とても美しく神秘的。それとクマリが地方にもいる事を知った。2017/09/15
ナコち
9
ネパールで今も、絶大な信仰を持つ処女神クマリ。仏教国であるネパールで、息づく処女神文化を、女神や太母の源流、サブカルにある少女性などを踏まえ、長年の調査に基づき解明する。クマリについて知りたいのであれば最適な一冊。随所に載せられたクマリの写真はどれも美しい。神がどこからやってくるのか、女神の源流についての章は面白かった。処女を神聖視し、そこに不可思議な魔力を具えていると考えたのは、古今東西変わらない。表紙の少女の彫刻も本を手にしたくなる要因だった。2015/02/09
おむえむ
7
ネパールにおいて少女が生き神になるクマリ信仰を、著者の30年にも渡るフィールドワークで詳細に分析した一冊。掲載されているクマリの写真はどれも神秘的で、最後の500人のクマリが集まるシーンは圧巻だった。特にクマリが何故13歳前後でその役目を終えるのかについて、各宗教や文学を交えた少女信仰の考察は、本邦サブカルチャーにおいて世界を救う13歳前後の少女達にも何らかの妥当性があるのではと思わずにはいられなかった。2014/12/28
臓物ちゃん
5
ジュリエットは13歳でロミオに出会い、聖母マリアは12歳でダビデに出会い、ベアトリーチェは9歳でダンテに出会った。斯様に幼き処女は特別視され続けてきたのに何故少女愛が危険視されているかといえば、それはおそらく少女そのものが危険だからだ。そんな神聖にして危険な女神達の系譜を、ネパールのクマリ信仰の研究をもとに解き明かす力作。クマリって初めて知ったけど、『TRICK』みたいな不思議な世界で何だか心が広がる。処女厨である自分に厚みを持たせたいという人に限らず、異国情緒溢れる信仰に興味のある人にもオススメ。2015/06/12