出版社内容情報
心をそっと包みこむ、等身大の成長小説
未熟児として生まれ、ばらばらの父母のもと、欠落感と一緒に育ってきた私は、介護ヘルパー先の横江先生の家で額装の仕事に出会う。ずっと混線していた私の心が、ゆっくり静かにほどけだす──。
内容説明
十九年間、黙ってきた。十九年間、どうでもよかった。「私にはちょうどいい出生だった」未熟児で生まれ、両親はばらばら。「あなたの目と耳を貸してほしいんだ」はじまりは、訪問介護先での横江先生との出会い。そして、あの人から頼まれた額装の手伝い。「ひとつひとつ揺り起こして、こじあけて、今まで見たこともなかった風景を見る」心をそっと包みこむ、はじまりの物語。
著者等紹介
宮下奈都[ミヤシタナツ]
1967年福井県生まれ。2004年「静かな雨」で文學界新人賞佳作に入選。2007年に刊行された初めての長編『スコーレNo.4』が絶賛され、注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
170
「足りない」ということはもしかしたら、人にとって最強の武器なのかもしれない。足るを知り、足りないことを必要以上に嘆かない人は、きっと強い。登場人物がとても魅力的で、セリフやシーンのあちこちに「思い当たるフシ」があって、じんわりと大切なことを思い出していくような物語だ。主人公が耳が聞こえづらいという設定だからか、文章表現がとても色彩豊かな感じがした。読後、主人公の幸せな記憶に寄り添うみたいに、エラ・フィッツジェラルドの『サマータイム』を再生した。2012/08/29
おくちゃん🌱柳緑花紅
125
小さくて硬い丸が少しずつ大きくなって、灯りのような穏やかな黄色みがかったオレンジ色になり、益々柔らかく大きく広がっていく。そんなイメージを感じながら読了。先生、あの人、隼、三人に出会い、彼女は徐々に。。。先生が丁寧に淹れてくれた紅茶に対する彼女の感想が「軽くて、透明で、とろっとしてて、甘くて、爽やかで、水みたいで、草みたいです」他にも彼女の感性を宮下さんは紡ぎます。読者の私まで真ん丸になれた気にさせてくれます。心地よい読後感。2016/06/06
あつひめ
108
いつもみんなの背中ばかりを見てきたのだろう。勉強もスポーツも遊びも。どうしたらいいのかわからなくなると黙って気配を消すような。最初と最後では全く別人のように感じる佐古さん。いつもオドオドしていたのに人の気持ちを察することができている。人って、歩幅を揃えて歩くことはないんだ。早足の人もゆっくりの人もいる。ただ、自分の足で歩くことが大事になってくるのかも。人が老いていくのもゆっくり。記憶の一頁ずつをはがしていくように消えていく。切ないな。自分を見つけた主人公と消えていく老人。生きてるってことだよね。2014/02/13
ちはや@灯れ松明の火
100
何気ない日常の一コマを切り取って、その瞬間の記憶ごと額装すれば、しあわせの景色がうまれる。小さなからだのあちこちに散らばる何かが足りない箇所、仕方がないとあきらめて、見つめる窓の外は雑音だらけで素っ気なくて。おだやかな声が、懐かしい歌が、耳に触れる。足りなかった誰かの何かに、心が触れた。余所者でもお客さんでもなく、ここにいていいんだと。ありがとう、ごめんね、願うように優しく響くことば。耳を澄まして、絵の中に、歌の中に、日々の中にあふれる無数の音から大切な声だけをすくいあげよう。しあわせの景色を彩るために。2012/07/01
mariya926
98
あれ?この本は読了済って事を知りつつ読みましたが、それにしても何も覚えていませんでした。未熟児として生まれて保育機に入れてもらえなかったから自分は足りなく、音も聞こえなくなるという考えに捕らわれて生きてきた主人公。額を作るという事を通して、また先生家族との触れ合いを通して少しずつ考えから解放されていきます。所々の挿し絵が優しくて「今」を切り出しています。2023/12/22
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