出版社内容情報
女を殴る父と、同じ目をした、俺。
川辺の町で暮らす17歳の少年。セックスの時に暴力を振るうという父親の習性を受け継いでいることを自覚し、懼れ、おののく…。逃げ場のない、濃密な血と性の物語。第146回芥川賞受賞作。
内容説明
欲望は、すべて水に還る。少年たちの愛の行方と血のいとなみ。川辺の町で起こる、逃げ場のない血と性の濃密な物語を描いた表題作と、死にゆく者と育ってゆく者が織りなす太古からの日々の営みを丁寧に描いた「第三紀層の魚」を収録。第146回(平成23年度下半期)芥川賞受賞作。
著者等紹介
田中慎弥[タナカシンヤ]
1972年山口県生まれ。山口県立下関中央工業高校卒業。2005年「冷たい水の羊」で第37回新潮新人賞受賞。2008年「蛹」により第34回川端康成文学賞を受賞、同年に「蛹」を収録した作品集『切れた鎖』で第21回三島由紀夫賞受賞。「共喰い」で第146回(平成23年度下半期)芥川龍之介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
367
初読み作家さん。まずは作家さんのプロフィールを読んで驚く。工業高校出身なのね。地方の工業高の生徒ってヤンキー入って、本なんて読まないイメージだったので、それがまさか書くほうにまわるとは。って失礼、私の勝手なイメージですけど。いやー結論を言うと、私は好きです、この作家さん。全体に流れる静けさが。文章がちょっと固いような気もしますけど。芥川賞をとった表題作よりも、私は「第三紀層の魚」のほうが好き。主人公のボクと大人たちの心の交流がめちゃよかった。これからも機会があったら読みます、彼の作品。2013/09/30
遥かなる想い
350
第146回(平成23年度下半期)芥川賞受賞作。 自分ではどうしようもできない血の繋がりを 描く。大阪弁が哀しい。宮本輝のデビューのころに作品に似て映画にしたらモノクロだろうか。それにしてもなぜ今の時代にこの小説なのか..という疑問は残る。2013/02/18
zero1
325
芥川賞受賞作を何度目かの再読。舞台は昭和63年。河口に近い街に住む17歳の遠馬は父とその愛人の三人暮らし。父は女性に暴力をふるうが、自分も恋人の千種にそうしてしまうのではないかと恐れを持つ。未来への展望がない中、性と暴力の衝動に悩む。そして大雨の中、結末が。80ページに満たない短編ながら、「自分の足音においかけられた」や「空気を青黒く突き刺している松林」など表現はまさに純文学。小説を読み慣れている方なら、書けそうでいて書けないことに気がつくはず。2019/06/30
団塊シニア
242
男の暴力に向き合う女性達が存在感がり魅力的である。二人の母を持つ主人公、父との関係、セックス、筆者の構成の上手さもあり一気に読めます。2012/02/16
kaizen@名古屋de朝活読書会
201
芥川賞】共喰い、第三紀層の魚の2本立て。すばる2011年10月、2010年12月掲載。共喰いが芥川賞。どちらも釣りなどの魚の話題が出てくる。山口県出身。やや暗い。共喰いという現象自体が暗いので仕方ないか2013/07/23
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