土に贖う

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  • サイズ 46判/ページ数 256p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784087712001
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

大藪春彦賞受賞第一作!
明治時代の札幌で蚕が桑を食べる音を子守唄に育った少女が見つめる父の姿。「未来なんて全て鉈で刻んでしまえればいいのに」(「蛹の家」)
昭和初期、北見ではハッカ栽培が盛んだった。リツ子の夫は出征したまま帰らぬ人となり、日本産ハッカも衰退していく。「全く無くなるわけでない。形を変えて、また生きられる」(「翠に蔓延る」)
昭和三十五年、江別市。装鉄屋の父を持つ雄一は、自身の通う小学校の畑が馬によって耕される様子を固唾を飲んで見つめていた。木が折れるような不吉な音を立てて、馬が倒れ、もがき、死んでいくまでをも。「俺ら人間はみな阿呆です。馬ばかりが偉えんです」(「うまねむる」)
昭和26年、最年少の頭目である吉正が担当している組員のひとり、渡が急死した。「人の旦那、殺してといてこれか」(「土に贖う」)など北海道を舞台に描かれた全7編。
これは今なお続く、産業への悼みだ――。

カバー画:久野志乃「新種の森の博物誌」

【著者略歴】
河崎秋子(かわさき・あきこ)
1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞を受賞。『颶風の王』で2014年に三浦綾子文学賞、2016年にJRA賞馬事文化賞を受賞。2019年『肉弾』で大藪春彦賞を受賞。

内容説明

明治時代の札幌で蚕が桑を食べる音を子守唄に育った少女が見つめる父の姿。「未来なんて全て鉈で刻んでしまえればいいのに」(「蛹の家」)。昭和35年、江別市。蹄鉄屋の父を持つ雄一は、自身の通う小学校の畑が馬によって耕される様子を固唾を飲んで見つめていた。木が折れるような不吉な音を立てて、馬が倒れ、もがき、死んでいくまでをも。「俺ら人間はみな阿呆です。馬ばかりが偉えんです」(「うまねむる」)。昭和26年、レンガ工場で最年少の頭目である吉正が担当している下方のひとり、渡が急死した。「人の旦那、殺しといてこれか」(「土に贖う」)など北海道を舞台に描かれた全7編。

著者等紹介

河崎秋子[カワサキアキコ]
1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞を受賞。『颶風の王』で2014年に三浦綾子文学賞、2016年にJRA賞馬事文化賞を受賞。2019年『肉弾』で大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

青乃108号

282
河崎秋子の短編集は初読。北海道を舞台に、養蚕、ミンク飼育、ハッカ栽培、馬の蹄鉄屋、アホウドリ狩り、レンガ製造。それぞれに従事した者達を描いた6編。時代はいずれも明治から始まる。どの短編も甲乙付けがたくのめり込まされる。そして最後の7編目は6編目のレンガ製造に従事した男の、子供の物語。レンガ製造は辛い、お前は勉強して下らない事で怪我をさせらずに済む綺麗な仕事につけ、と6編目の子は銀行員を経て陶芸家となる。時代は現代。ラストは全ての短編を集約し、人々が生きて来た土地という存在に思いを馳せるもの。良い本だった。2024/08/15

いつでも母さん

250
河﨑さん初読み。短編7作、そのどれもがその頃の空気や匂いを纏い私を過去へと誘った。土の重さ、汗の臭い、立ち枯れた季節、頬伝う涙・・かつて北海道に栄えた産業や支えた人々の栄枯盛衰。静かだが腰の据わった息遣いが聴こえるような読後感。幼い頃近所に蹄鉄屋さんがあった。熱い鉄を打つ音や馬の蹄の焼ける臭いを懐かしく思い出す。タイトル作からの『温む骨』で結ぶのが良かった。2020/02/19

しんたろー

250
『颶風(ぐふう)の王』以来の河﨑さん。北海道を舞台に様々な産業の隆盛と没落の推移と関わった人々の物語が7つ…養蚕の『蛹の家』、ミンク毛皮の『頸、冷える』、ハッカ農家の『翠に蔓延る』、羽毛の『南北海鳥異聞』、馬蹄鉄屋の『うまねむる』、レンガに纏わる父子二代の『土に贖う』~『温む骨』…知らなかった事ばかりで興味深く、歴史的ドキュメンタリーを読んでいるような気分にもなった。淡々と醒めた描写だが、不思議と熱を感じる人の描き方が効いている。消えた産業と従事した人を追悼しつつ、人生の意義を考え、余韻も残る作品だった。2020/01/14

おしゃべりメガネ

223
北海道出身・在住の河崎さんの作品はやはり、北海道民でしか出せない独特な味わいが感じられます。本作は札幌や江別、北見や根室らを舞台にした7編からなる短編集で、明治から現代までを綴ります。限られたページ数の中でも、河崎さんらしい北海道の雄大な雰囲気を綴る描写は素晴らしく、どの話も見事に魅了されました。個人的には北見の薄荷の話と根室や別海でのミンクの話がココロにしみてきました。江別でのレンガの話は改めて江別の街を訪れたくなりますね。悲しく、儚いながらもどこか温かみのある河崎さんの作品がこれからも楽しみです。2019/10/05

昼寝ねこ

203
北海道で明治大正昭和の時代に隆盛を誇りながら、今では廃れてしまった産業群。蚕、ミンク、ハッカ、羽毛、蹄鉄、レンガ。それらを生業として生きてきた人たちの思いが詰まった作品集。派手なドラマがあるわけではない。結末さえも重要視してはいないように見える。しかし圧倒的な筆力に引き込まれる。そこには成功には縁のない、決して幸せとは言えない人たちの辛く苦しい営みの断面がある。短い物語の一編一編が1冊の本になるぐらい密度が濃かった。最後の物語だけは時代が現代になるが、作品全体を象徴し引き締めているように感じた。2024/11/09

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