出版社内容情報
判断力が、体力が、財産が、奪われていく――。大手企業をリタイアし、妻を亡くして独り暮らしの72歳、武田清が嵌まった、介護業界の落とし穴とは!? 巧妙に仕組まれた罠に孤独な老人たちはどう立ち向かえばよいというのだろう。それは合法か、犯罪か。現代に潜む倫理観の闇に迫るサスペンス。
【著者略歴】
安田依央(やすだ・いお)
大阪府堺市出身。関西大学法学部政治学科卒業。2010年『たぶらかし』で第23回小説すばる新人賞を受賞、2011年に単行本として刊行。同作は2012年に「たぶらかし -代行女優業・マキ- 」のタイトルで谷村美月主演でテレビドラマ化。他の著書に『終活ファッションショー』『出張料理・おりおり堂』『人形つかい小梅の事件簿』。
内容説明
体力が、判断力が、貯金が、奪われていく。悪徳老人介護施設の罠にはまった老人たちの行く末とは―。幼い娘を亡くし、妻に先立たれた72歳の武田清に差し伸べられた、社会とのつながり。しかしそれは転落への序章だった。現代社会の闇に焦点を当てたリアルサスペンス小説。
著者等紹介
安田依央[ヤスダイオ]
大阪府生まれ。2010年『たぶらかし』(「百狐狸斉放」を改題)で第二三回小説すばる新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
157
ひたすら気分悪く、あまり語りたくない…描かれるのは『ひと喰い介護』のタイトルのままに資産家老人に「究極のオーダーメイド介護」を掲げ、財産身ぐるみ剥ぎ取る顛末。前半で示される理念やグレード制など介護に異端とも思える取組みには覚えあり苦笑…後半で明かされる悪行の数々、このまま行われているとは言わないが、近いことは十分ありえると想像する…公的保険外サービスや官庁管轄外施設、認知症あるいは判断能力の有無、親族の後ろめたい気持ちなど漬け込まれる盲点は幾らでもあるのだから…介護業界に属する身として何だかスゴく寂しい…2020/01/14
utinopoti27
138
妻に先立たれ、孤独な老後を送る武田清は、現役時代のプライドを捨てきれない72歳。そんな彼のもとに、ケアマネという名の皮を被った魔女の甘美な囁きが忍び寄る・・。身寄りのない資産家の高齢者に提供する「究極のオーダーメイド介護」とは何か。本作は、実話をベースにしたという、介護ビジネスの闇に切り込む社会派サスペンスだ。気力が、判断力が、財産が徐々に奪われてゆくプロセスは、まさにホラーそのもの。民間の福祉事業は、所詮営利目的である以上、こんなビジネスモデルが実在しても何ら不思議ではないのだろうか。これはガチで怖い。2019/11/22
モルク
124
ホラーではないが怖い。高齢者施設にはこんなところないとは思うが、もしかして…高齢者の資産家族構成を調べあげ理想を掲げ孤独な老人を抱え込む。「究極のオーダーメイド介護」をうたい、健康を害し認知症になるよう孤立させ、そしてその資産を食い物にする。本作での登場人物武田の資産を吹聴すること、過去の仕事の実績の過信、他人に対抗しての巨額な寄付など感心しない部分も多いが、会社側の房子の不気味さは計り知れない。房子の独壇場はまだまだ続く…ああ怖い!2019/11/04
ちょろこ
121
イメージは獲物をいたぶる猛獣、の一冊。介護事業をテーマにしたサスペンス。脳裏に浮かぶのは猛獣。先ずは仕留めた獲物を爪を隠した手で転がしもてあそぶ。次第に爪で傷つけいたぶり、ついに牙を剥く。そして骨までしゃぶり尽くしながら、その獰猛な目は早くも次なる獲物を狙っている…ずっとそのイメージがつきまとう。そして心には恐怖がつきまとう、まさにダブルの恐怖。このタイトルに納得せざるを得ない。個人情報だだ漏れの世の中、孤独につきいる巧みな罠、弱者の心に入り込む巧みな話術、リアルにあり得る問題として、ただただ恐ろしい。2019/09/19
fwhd8325
96
タイトルからすると、もっとエグいのかと思っていましたが、前半はともかく後半は何だかな、時を分けてまで描く必要があったのかなと思います。作家の方には申し訳ないけれど、老人を食い物にする事件は多くあります。小説の世界では、それを超えないと物足りないくらい現実は強烈です。前半が面白かっただけに残念でした。2019/09/17