出版社内容情報
クラスでひと際目立つ、快活で光のような存在の原田に憧れを持つ私だったが──「怒る泣く笑う女子」。10代特有の初期衝動を描く、青春連作短編集。どんな人生を歩んでも、きっと誰か味方はいる。
小嶋 陽太郎[コジマヨウタロウ]
著・文・その他
内容説明
「林ちゃん、なにか護身術習えば?」そう提案されるがままに、私はパルコの屋上にいる「蹴り男」に会いに行く。「空に飛び蹴り」気になる人ができたかも。新学期、クラス替えした教室で、私は原田幹雄に出会う。クラスでひと際目立つ原田の存在が、私を悩ませる。「怒る泣く笑う女子」学校を舞台に、10代特有の初期衝動を描く連作5編。
著者等紹介
小嶋陽太郎[コジマヨウタロウ]
1991年、長野県松本市生まれ。2014年『気障でけっこうです』で第16回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
39
不幸だらけの状況に空から降ってくる不幸を蹴り続ける少女、気になる人を意識する高校生のままならない思い、再婚して違和感だらけになった家族と新たに加わった飼い犬、ストーカー気味な片想いの真実、少年が気づいた救ってくれた友人の真相。ままならない少年少女の不雑な心情を描いた青春連作短編集。登場人物たちはそれぞれゆるく繋がっている関係で、自分の努力では容易に解決しない問題を抱えていて、それゆえに辛い出来事にも遭遇しますが、ふとした転機からだいぶ救われた心境になってゆく、少しほろ苦いけれど悪くない読後感の物語でした。2018/05/27
nemuro
38
市立富良野図書館から借りた一冊。タイトルと、新井陽次郎氏のインパクトある表紙イラストに興味惹かれ借りてみた。たぶん初遭遇の作家。「学校を舞台に、10代特有の初期衝動を描く連作5篇」とのこと。気合溢れる表紙イラストは、直接的には1話目の「空に飛び蹴り」のイメージだろうけど、5話全部の気持ちでもあるような。どれも良かったが、特に「吠えるな」がグッときた。極めて個人的なこととして、また一人注目の作家発見!だと思う。2020/02/20
☆よいこ
36
[空に飛び蹴り]痴漢にあって護身術をならいたい林(はやし)だったが、お金がない。パルコの屋上で無心に空を蹴りあげている蹴り男を見習うことにした。落ちてくる不幸を蹴る。[怒る泣く笑う女子]女の子になりたい三崎(みさき)は原田幹雄が好き。原田は林が好き。[吠えるな]小倉は近所に住む同級生の進藤とキスしてるけど付き合ってない。妹の飼い犬のキティは懐かない。[ストーリーテラー]大学生の相田(あいだ)はストーカー。敷島夢姫(ゆめ)はいい子。[僕とじょうぎとぐるぐると]三崎の弟は女の子になりたい兄ちゃんの味方。2018/06/29
ヨル
33
信州が誇る作家、小嶋陽太郎、さぞや登録数も沢山と思いきや意外と知られてなかった。普通の10代だけどちょっとずれてるヒトビトの苦悩を繊細に新鮮に飄々と描き、彼らがひと皮剥ける様を目撃させてもらえます。不安や悲しみやらの暗いぐるぐるは蓄積してパンパンに膨らんでしまい、棘を軽く突いただけでも破裂しそうだが、気遣いある他者にそっと撫でられただけであっさり萎むこともある。願わくは心が固く凝る前に誰かの言葉を受け取れるよう、何回でも脱皮して新しい人生を送れるよう、心からの声援を送りたい。2019/06/02
そうたそ
29
★★★★☆ 10代特有の初期衝動を描く青春連作短編集、とあらすじにはある。確かにそれとなく思春期を過ごす学生というよりも、どこか何ものともいえぬ衝動に突き動かされ何か行動を起こしてしまうような男子・女子が描かれている。自分はこういうタイプではなく、どちらかといえばその他大勢に属してしまうような人間だったなあと思いながら読んだ。いそうでいない感じがする各キャラの微妙なラインが良いかも。総じてユーモアの含まれたような描き方で非常に読み心地良い。著者はまだまだ若い方のようで今後が楽しみな作家さんだ。2018/11/18