出版社内容情報
集英社創業85周年企画『コレクション戦争と文学』(全20巻)から8冊を厳選。手に取りやすい文庫判で装い新たに毎月刊行スタート!
内容説明
広島と長崎に原爆が落ちた日、世界は一変した―。言語を絶する被爆地の惨状を書きとどめた、原民喜の名作「夏の花」。広島と長崎での被爆体験をそれぞれ綴った、大田洋子「屍の街」と林京子「祭りの場」。その他、井上ひさし「少年口伝隊一九四五」、大江健三郎「アトミック・エイジの守護神」、田口ランディ「似島めぐり」など、現代作家の視点も交え、原水爆の惨禍を描き出した作品を収録。
目次
1(夏の花(原民喜)
屍の街(大田洋子)
祭りの場(林京子))
2(残存者(川上宗薫)
死の影(中山士朗)
少年口伝隊一九四五(井上ひさし))
3(夏の客(井上光晴)
戦(美輪明宏)
炭塵のふる町(後藤みな子)
暗やみの夕顔(金在南)
鳥(青来有一))
4(死の灰は天を覆う(橋爪健)
アトミック・エイジの守護神(大江健三郎)
金槌の話(水上勉)
「三千軍兵」の墓(小田実)
似島めぐり(田口ランディ))
詩(生ましめんかな(栗原貞子)
八月六日(峠三吉)
浦上へ(山田かん))
短歌(正田篠枝;竹山広)
俳句(三橋敏雄;松尾あつゆき)
川柳
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
88
約八百ページに渡る「広島・長崎」及び戦後の核実験、原発に関する文学作品群。読んでいる間中、私の心を支配していたのは「慟哭」の二文字。圧倒的な悲しみの前に何が言えるだろう?この悲劇を乗り越えて、私達は本当に「平和」を築けたのだろうか?公式、非公式を問わず、核の保有国は増え続け、戦火がこの世から消えた事があるだろうか?「武器だけを恨んでも仕方がない、寧ろ悪魔を生み出す自分の心を恨むべきだから」とさだまさしは歌う。差別や偏見を生み出す悪意を私達は見逃してはいけない。忘れ去ってはいけない事が、この世にはある。2020/08/05
rico
63
重い・・・。物理的にも内容的にも。何となく手にとってしまったけど、こんな魂を削られるような読書は初めてかもしれない。あの日の、地獄という言葉さえ生ぬるい惨状。傷を背負って生きた人々。第五福竜丸。歳月を重ね消えゆくあの日の残滓に触れ、ゆれる戦後世代。原発。ヒロシマとナガサキ。教室の残骸の中に並ぶ灰と骨の山の中から見つけ出したペン先が、息子の死の証明。林京子さんの「祭りの場」の1シーン。こんな凄まじい作品が続く。あの閃光がもたらしもの、それを伝える言葉の奔流に飲み込まれる。知ることは力になると信じたい。2019/08/21
優希
47
戦争を題材にしているので重みがあります。広島、長崎、被曝体験といった惨劇を描き出していて、これが実際に起こったことかと思うと恐怖心が湧いてきました。戦争が過去の遺産になり始めている今だからこそ必要な本だと感じずにはいられません。2022/06/08
かおりんご
31
ページ数もさることながら、内容もかなり重かったです。広島だけでなく、長崎での被爆体験や第五福竜丸の話もあり、色々考えさせられました。今朝のニュースで、ロシアが核兵器を使用するかもしれないとの話が出ていました。あの悲劇は繰り返されるべきではありません。もう、たくさんです。2022/10/02
かふ
18
戦争文学のアンソロジーの原爆編。以前だと大江健三郎が編集した『なんともしれない未来に』があったのだが、時代と共に新しく出されるのだろう。それは意義あることだと思う。原爆文学と言うと原民喜の名は誰でも上がると思うのだが、彼一人だけではないのだ。また小説以外にも詩や短歌や俳句、川柳まである。そして原爆体験者でない最近の人(田口ランディ)?のエッセイなど。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n716872c4dfda2022/08/10