内容説明
語り手はシャンゼリゼ公園でジルベルトと戯れながら、快楽の目ざめを覚える。彼女の両親スワン夫妻とも近づきになるが、二人のあいだに食いちがいが生じ、交際は中断される。別れていることの苦悩と恋の相手に対する忘却の始まり。やがて語り手にとっては、ブーローニュの森でスワン夫人の散歩のお供をするのが楽しみになる(第二篇第一部)。語り手が祖母とともに、かねてから夢見ていたノルマンディ海岸バルベックに到着する(第二篇第二部冒頭)。
著者等紹介
プルースト,マルセル[プルースト,マルセル][Proust,Marcel]
1871.7.10‐1922.11.18。フランスの作家。パリ近郊オートゥイユに生まれる。若い頃から社交界に出入りする一方で、文学を天職と見なして自分の書くべき主題を模索。いくつかの習作やラスキンの翻訳などを発表した後に、自伝的な小説という形で自分自身の探究を作品化する独自の方法に到達。その生涯のすべてを注ぎ込んだ大作『失われた時を求めて』により、20世紀の文学に世界的な規模で深い影響を与えた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
112
スワン夫妻とジルベルトの物語はどうやら終焉を迎えたようだ。この巻にはノルポワ氏や作家のベルゴットとの接点を通じて、プルースト自身の芸術観が垣間見える。すなわち「天才的な作品がただちに人びとに賞讃されること」の難しさと、それにもかかわらず「作品自体が、天才を理解することのできる精神の芽を作り」、かくして五十年の歳月をかけてベートーヴェンの四重奏曲の聴衆を増やしたと言うのだ。そういえば、このことを知っていたスタンダールも、自らの小説の評価を五十年後に託したのだった。プルーストの評価には五十年は必要なかったが。2013/12/04
ケイ
100
「スワン夫人をめぐって」「土地の名・ 土地」の一部。前巻でオデットの嫌らしさを体感し、彼女との結婚によりスワンが俗物的趣味を持つにいたったのを知ると、中年の域に入り太ってしまった彼女に語り手がひかれる部分のでは感情移入ができなかった。語り手は恋するジルベルトの母親としてみるからだろうか。ジルベルトと出会ってシャンゼリゼで走り回っていた主人公が、1年後には娼家に出入りし、2年後にはともに海岸に発った祖母に子供扱いされている。思春期の青年とはややこしいものだ。「土地の名」での文章、描写はとても美しく好み。2015/10/07
s-kozy
75
第一部は「スワン夫人をめぐって」語り手の初恋は振られて終わりました。恋に恋する思春期男子の妄想炸裂な語り口でございました。併せてプルーストの考える文学論、芸術論が展開されているのが興味深いところです。物語は第二部「土地の名・土地」ヘ。第一部から二年経過、「二年たって祖母といっしょにバルベックに出発したとき、」で始まりました。新たな展開に入るところで四巻へ続く。2015/10/29
夜間飛行
71
《聡明な鑑定人》ノルポワに芸術の夢を砕れた語り手だが、ジルベルトの器量を貶された時、スワン夫人より娘の顔が好きだとはっきり言った事に喝采を送りたい。誰を美しいと思うかは自由なのだ。芸術の根底には一切の凝固した考えや習慣から美と官能を解き放つ願いがある。それは時間への挑戦でもあろう…《愛されているモデルは動き回る》《本当にジルベルトの顔立がどんな風だったか、もうわからなくなっていた》。ジルベルトへの恋も芸術も、幻のように消えてゆく。一方、時代を制したスワン夫人のエレガンスは光り輝く扉となって社会を偽装する。2015/12/15
たーぼー
53
歯痒くも必然性を伴った愛の破滅に安堵感すらも。対立しながら共存する「違和感」と「共感」はもはや癖になりつつある。そしてノルポワ氏の登場。彼の主張を通じてプルーストの文学観と当時(今も?)ものを書くことが卑とされ凡庸の生活に収まることが人としての勝利であると考えられてきたことへの抵抗を垣間見ることができる。本巻は芸術への言及もテーマの一つ。プルーストには通常視覚を超えた芸術に対する知覚の輝きを感じる。個々の物体への光たる客観的認知と陰影を認識する知覚とが無尽蔵に溢れ極端に優れてこそ、この戦慄の書をかけるのだ2015/07/26
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