内容説明
語り手が眠りに引き込まれてゆく描写から、小説は始まる。夢現の状態、目ざめ、そのときに思い起こすコンブレーでの幼年時代、母が与えてくれた「おやすみ」のキス…。しかしこれらの記憶は断片的で、本当に生きた過去を返してはくれない。ところが後になって、ある冬の日に、何気なく紅茶に浸したプチット・マドレーヌを口に入れたとたん、幼年時代に味わった同じマドレーヌが思い出され、それと同時に全コンブレーの生きた姿が蘇る(第一篇第一部)。
著者等紹介
プルースト,マルセル[プルースト,マルセル][Proust,Marcel]
1871.7.10‐1922.11.18。フランスの作家。パリ近郊オートゥイユに生まれる。若い頃から社交界に出入りする一方で、文学を天職と見なして自分の書くべき主題を模索。いくつかの習作やラスキンの翻訳などを発表した後に、自伝的な小説という形で自分自身の探究を作品化する独自の方法に到達。その生涯のすべてを注ぎ込んだ大作『失われた時を求めて』により、20世紀の文学に世界的な規模で深い影響を与えた
鈴木道彦[スズキミチヒコ]
1929年生まれ。東京大学文学部フランス文学科卒。一橋大学、獨協大学教授を経て、獨協大学名誉教授。1954年に渡仏。パリにて三年余りの研究生活を送るあいだに、プルーストの自筆やタイプ原稿を検討する機会を与えられる。それらにもとづいて帰国後にフランス語で発表した「プルーストの“私”」(1959)は、語り手の無名性を最初に立証する論文となった。プルースト研究のほかに、サルトル、ニザン、ファノンなどの研究・紹介を行う。また1960年代から70年代にかけて、数年のあいだ、反戦運動、在日朝鮮人の立場を擁護する運動などに従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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