内容説明
『万葉集』は、5世紀初頭から8世紀中葉まで、およそ350年にわたる4500余首の歌を収める。本書第一巻は、白鳳期(629~710)、いわゆる万葉第一・二期の中核的古撰集である巻一と巻二とを収める。宮廷の儀礼・行幸などにまつわる「雑歌」(巻一)と、万葉びとの愛と死を奏でる「相聞」「挽歌」(巻二)とは、『万葉集』の基本的な三大部立で、以下の巻の規範となった。額田王、柿本人麻呂たちの作品が天皇の代ごとに配列され、躍動的な白鳳歴史絵巻を繰り広げる。
目次
万葉集巻第一(雑歌)
万葉集巻第二(相聞;挽歌)
著者等紹介
伊藤博[イトウハク]
1925~2003。長野県生まれ。1952年、京都大学文学部卒業。文学博士。筑波大学教授、共立女子大学教授などを歴任。万葉学会代表を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
15
万葉集二十巻を一貫した作品と捉え、一首一首ではなく、前後の文脈や配置に意味を見出し、「歌群」として「釈文」をつけたもの。自分も断片的に読んできただけにこのような読み方は物語を読んでいるようで、興味深かった。本巻で扱われている内容としては、105~109を大津皇子事件を背景に置く男女の物語として読んだところ、天智天皇薨去時の挽歌の配列を歌詠順と捉え、古代における挽歌や殯のあり方を問い直しているところなど、興味深かった。2021/01/15
KAZOO
6
全10巻ですが、順に読んでいこうと思っています。文字も大きく読みやすく地図なども入っており非常に親切な本です。補注も詳しいので理解しやすく今まで何度か萬葉集に挑戦したのですが、完全に読み通したことはありません。いつも万葉散歩のような本ばかりになってしまうのですが、この本で初めて完走できる可能性が出てきました。2013/02/14
oz
6
初読。万葉集論といえば中西進が有名だがこの伊藤博の名も知られるべきだ。中西の万葉集論の偉業がわずか30代半ばで成し遂げられ、その後も非常に多岐な研究で業績を残されたことは有名だ。その偉業を前にしながら生涯を賭して著されたのがこの萬葉集釋注である。かつては高額な全集でしか見られなかったが集英社文庫ヘリテージシリーズで発行の運びとなった。中西よりも遥かに難解かと思ったがそうでもない。初心者にもよし。天平の世に咲いた絢爛なる言の葉を堪能できる。2009/08/30
月曜は嫌い
2
一首ずつこまごまとした注釈はなく、まとまりとしての「歌群」ごとに「釈文」がつけられている。この「釈文」が抜群に面白い。日頃、歌集など無縁という人こそ一度手に取ってみてほしい。2016/10/15
月音
1
どの出版社の『万葉集』がいいか迷い、“お試し”のつもりで手にした本書が予想以上に面白い。田辺聖子さんが「萬葉時代小説でも読むよう」と評されたのが頷ける。物語として意識された構成は、陳腐な表現だが古代ロマンとミステリーとも言いたい。歌の背後にあった歴史が立ち上がり、個々の心情と合わさることで歴史はより厚みを増し、歌の情感は深まる。天皇の弥栄を寿ぎ、宮廷の華やぎを高らかに歌う歌と、政争に敗れ、横死した者の歌を共に収めて光と闇の落差を見せているのは、歴史の片面のみを伝える正史との大きな違いだ。⇒続2024/02/24