内容説明
第一天から第十二天まで、ベアトリーチェが案内する天国の旅。途中、先祖の霊カッチャグイーダから、地獄・煉獄・天国の三界での見聞を、大胆に書きあらわせと命じられたダンテは、天国の霊たちと語らいつつ、真理の光に対し徐々に啓発されてゆく。やがて至高天に至ったダンテのために、ベアトリーチェに代わって聖ベルナルドがマリアへ祈りを捧げてくれる、見神の恵みを与えたもうようにと。
著者等紹介
アリギエーリ,ダンテ[アリギエーリ,ダンテ][Alighieri,Dante]
1265‐1321。イタリアの詩人。フィレンツェに生まれる。百科事典的な知識の集成を物語に織りこんだ不滅の古典『神曲』を著して、ヨーロッパ中世の文学、哲学、神学、および諸科学の伝統を総括し、またルネサンスの先駆けとなった。フィレンツェの市政にも深くかかわったが、1302年、政変により永久追放の宣告を受ける。以後、放浪のうちに執筆を続け、ラヴェンナで没した
寿岳文章[ジュガクブンショウ]
(1900~1992)神戸市生まれ。京都帝大卒。英文学者、書誌学者、和紙研究家。龍谷大学、関西学院大学、甲南大学の教授を歴任。『神曲』訳により、1976年読売文学賞受賞
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感想・レビュー
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優希
95
最終巻では天国の旅が描かれます。ベアトリーチェに導かれ、天国へと足を踏み入れたダンテ。霊たちとの語り合いの中で、真理の光に啓発されていく姿が印象的でした。不可解さを冷静に質問することで、真実が見えてきたのでしょう。それ故に至高天にたどり着き、マリアへの祈りと賛歌が歌われたのだと思います。地獄・煉獄と旅をしてきて、ようやく光の地である天国へと導かれたことで、御神の恵みという大きな愛で包まれるまでに至ったのでしょう。長い物語でしたが、素晴らしい作品に出会えて良かったです。2017/08/16
優希
57
ベアトリーチェの導きにより、天国へと入ったダンテ。霊たちと語らいつつ、真理の光に啓発されていく様子が引照深いです。至高天に至ったダンテのためにマリアへ祈るのは見神の恵みを与える賛歌だったのだと思いました。地獄から煉獄、そして天国へと導かれたことで、御神の恵みという愛の印を見ることができたのでしょう。2020/10/09
syaori
52
地球の外側を回る天球を巡り、神の在す至上天を目指すダンテ。祝福された霊たちが座を持つその場所は、どれも霊妙な光に溢れ眼が眩むよう。そこでダンテに示されるのは、宇宙を含む世界を回す神の愛とその営為について。つまりは彼が見、認識していた全世界とその理について。それはまだまだ中世の欧州の価値観のなかなのですが、しかしダンテがたどり着いた光、人を導き、正義と慈悲を腐敗した世にもたらすのだと信じた星をも動かす「愛」は、世界が広がって神も唯一ではなくなり、また〝神は死んだ”現在も世界を照らし続けているのだと思います。2018/05/25
ヴェルナーの日記
27
ここまでダンテを導いてきた師ウェルギリウスに代わり、ベアトリーチェが導者となる。地上の楽園より9天を通過し、至高天・雪白の薔薇へと到る旅路を編まれている。全編通じて挿絵は、ウィリアム・ブレイクの絵が使われ、全枚数102枚(そのうち3作品は、どの場面を描いたのか分からずに省かれている)の作品が描かれた。未完の絵もあるが、完成させるにはブレイクの命の時間が足りなかった。しかし、その作品は、どれをとっても秀逸なもので、特に『天国篇』では抽象的な詩が多く、誰も成し得なかった文を絵として描いた彼の偉大さが際立つ。2014/12/06
金吾
25
神曲は好きな作品なのですが、天国篇はなんとなく幸せな気分になりますが、いつも消化不良気味で理解不十分になります。これはキリスト教に対する理解が乏しいのと人の感覚を凌駕していくように感じるためなのかなと思いました。しかし神曲を通じ西洋の考え方の一部を見ることができますので好きな作品です。2022/03/07