出版社内容情報
ルーの半年限定介護職の相手は、事故で四肢麻痺となった若き元実業家ウィルだった。徐々に惹かれ合う二人だが、彼は尊厳死を決意していて…。命のあり方を問う世界的ベストセラー。(解説/中江有里)
内容説明
6ヶ月限定の介護職についたルーが出会ったのは、事故で四肢麻痺になった、かつての実業家ウィル。はじめは冷たい態度をとるウィルだったが、ルーの実直な態度に徐々に心を開き、またルーもウィルのおかげで自身をもてるようになる。だがある日、彼女は知ってしまう。ウィルがスイスの尊厳死施設に予約を入れていたことを…。いのちと生き方について考える、世界で大反響を呼んだベストセラー・ラブストーリー。
著者等紹介
モイーズ,ジョジョ[モイーズ,ジョジョ] [Moyes,Jojo]
1969年ロンドン生まれ。さまざまな職業を経験したのちインディペンデント紙から奨学金を受け、1992年シティ大学ロンドンの大学院課程にて新聞ジャーナリズムを専攻。香港で1年間、インディペンデント紙で9年間ジャーナリストとして働き、2002年『Sheltering Rain』で小説家デビューを果たした。その後順調に執筆活動を続け、英国ロマンス小説家協会の年間最優秀ロマンス小説賞を2度受賞。現在は家族と共にエセックス州に在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュール リブレ
77
640ページの分厚い文庫本。久々に重々しい翻訳ものを読みました。イングランドの風景と、欧州の人たちの思考の流れ、それに階級社会のギャップなどが散りばめられた中、底辺に流れる人生に関する問いの重さに、答えようも無い無情感に包まれました。巻末の解説は中江有里さん。児玉清さん亡き後、読書家として後を継がれた印象があるが、淡々とコメントしながら、何を書けばいいのか迷われた印象。解説を引き受けるのも大変だと思った。2020/11/03
しいたけ
77
ルーの抱える沢山の生きづらさ。ルーの稼ぎに頼る家族、過去の不幸な出来事、妹へのコンプレックス。そのうえ職まで失い、漸く得た仕事は四肢麻痺患者ウィルを6カ月間介護するというもの。全てにおいて勝ち組だったウィルの人生は、事故により死を待つだけのものとなる。6カ月とは、尊厳死を決めたウィルが家族の為に設けた猶予期間。やがて通いあうふたりの心、数々の冒険、さなぎの中で羽根を動かし始めるルー。だが根底には「何をもって生きているといえるのか」という命題がある。人は愛で生きられるものではない。それはなんと哀しいことか。2016/07/03
ぶんこ
48
四肢麻痺の重度障害者となったウィルがのぞむ「尊厳死」回復の見込みのない病いにおかされた人のみ受け付けるスイスの施設?以前テレビのドキュメントで観たこと、実母の介護での「死にたい」という母の気持ち。様々なことが頭をよぎりました。ウィルを介護するうちに愛するようになってしまったルー。真面目で誠実で明るいルー。そんなルーをないがしろにしながらも愛している家族。尊厳死は看取る人が辛い。ルーの拒否、そして覚悟を持っての看とり。ルーの人柄に、何度も読む辛さが和らぎました。2022/04/05
菫子
21
甘い恋物語と現実問題がミックスされた社会派恋愛小説の傑作だと思います。なぜなら、介護の日常の細かなシーンや病状や心理もよく書けているから、緻密に取材されたのだと推測されます。(ウィルと同レベルの四肢麻痺者の介護経験がある自分は最初からラストまで共感しきりでした)。現実から目を逸らさず、感傷的にもならず、夢物語にも流れていないので素晴らしい。ウィルとルーの魅力もたっぷり伝わってきて純粋に恋愛小説としても心満たされました。素晴らしい作品。出版社さんはもっと宣伝して、多くの方々に読んでもらいたい作品です!2022/01/16
えぐざんぽ
21
先に映画を観て、ものすごく複雑な思いで泣いた作品。原作も読みたくなり手に取った。ウィル、ルー、ネイサン、トイレナー夫人、それぞれの気持ちが痛いほどわかる反面。どれもが間違ってるような気もする。尊厳死、自らの命は本人のものであって、それだけでもない。重く難しい問題。そこには、正解も不正解も無いと思う。そしてスイスに『ディグニタス』という尊厳死をさせてくれる場所があることに、驚きとショックを感じた。2017/05/07