出版社内容情報
同じページに2度と戻らない“無限の本"
本からページが湧き出すような無限の本“砂の本"のとりこになって謎を解き明かそうとした男はやがて恐怖を抱き…。南米の知の巨人、ボルヘスの知性、ウィットとさまざまな顔が楽しめる短篇集。
内容説明
ある日、ひとりの男がわたしの家を訪れた。聖書売りだという男はわたしに一冊の本を差し出す。ひとたびページを開けば同じページに戻ることは二度とない、本からページが湧き出しているかのような、それは無限の本だった…。表題作「砂の本」をはじめとする十三話。また、独自の解釈に基づき、世界各国の歴史上の悪役の一生の盛衰を綴った「汚辱の世界史」ほか、短篇を収録する。
著者等紹介
ボルヘス,ホルヘ・ルイス[ボルヘス,ホルヘルイス][Borges,Jorge Luis]
1899‐1986。アルゼンチンの詩人、小説家、批評家。幼い頃から文学と語学に親しむ。詩集『ブエノスアイレスの熱狂』の執筆後、雑誌の編集に携わる傍ら、詩やエッセイを多数発表。新人や無名の作家の発掘にも力を注いだ。また、対立していた独裁政府の崩壊後、国立図書館館長に任命される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
126
非常に楽しめる短篇集でした。私はけっこう難しいのではないかと思いましたが比較的短い作品が多く、また内容も興味を引くものがありました。「汚辱の世界史」の方はさらにわかりやすく歴史上の悪役の一生を簡潔に書かれています。その中には吉良上野介まで登場します。また解説の辻原登さんの小論も楽しめました。2022/11/20
buchipanda3
113
語る、語る、語る。その盲いたアルゼンチン翁の頭の中で楽しげに組み上げられた虚実入り交じった掌篇をたっぷりと味わえた。場所と時間の垣根を取っ払ったかのように文学、歴史、宗教などの題材を縦横無尽に使いまわし、学術っぽい雰囲気に仕上げながらも、その中身は純然たる物語りの愉悦に溢れている。嘘を語り出したらもう止まらないという感じだ。その語り口に翻弄され過ぎたか「砂の本」の後書きが後書きに思えずそれも一本の物語として読んでいた。併録の「汚辱の世界史」では珍しく東アジアのネタも。中東文化の物語ももっと読みたくなった。2021/08/17
ケイ
98
マルケスが、大変文章がうまく毎晩読むのだが彼の本は嫌いだとホルヘスを語っていたのが気になっていた。『砂の本』盲目となったホルヘスの口述筆記。見えない世界で浮かびあがる言葉は、それまでに得た深い知識から織り成す独特の幻想の世界。『汚辱の世界史』彼が選び出し再編した恥を知らぬ、世界史に残る者達の話。赤穂浪士の話を読むことで、彼の文章のうまさを確認する。吉良は、痛切な忠義の心を呼び覚まし不滅の偉業のために必要な矜持を用意したのだから全人類の感謝に値する人物だと述べることで赤穂浪士の名声を紹介する仕方に感心した2014/09/23
nobi
94
「砂の本」から「汚辱の世界史」へと読み進み、その終わり近く異質の一編に出会う。ならず者の編々に挟まれた忠義の編。“汚辱の…”に合わせたからか題は「…吉良上野介」でも赤穂浪士中心。浅野内匠頭の心中の怒り、大石内蔵助の京での放蕩三昧、四十七士の討ち入りの夜の一刻一刻。誰もが知るところでありながら隙の無い講談口調のリズムは忠義を果たさんとする浪士達の神々しさを引き立たせる。それまでアンティークな道具立てに事欠かなくてもどこか醒めた目を感じていたけれど、この一編には最後の薩摩侍に至るまでボルヘスの熱い想いを見た。2017/12/09
やいっち
75
過日、安部公房の『砂の女』を久しぶりに読み、その色褪せぬ先端ぶりの傑作を堪能。で、「砂」をキーワードにあれこれ文献を渉猟。その中で、この作品を今更ながらに発見。短編集だった。ボルヘス作品も久しぶり。2023/03/09