集英社文庫
蝿の王

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  • サイズ 文庫判/ページ数 389p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784087605785
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

原爆戦争勃発!イギリスから疎開する少年たちを乗せた航空機が、南太平洋の孤島に不時着した。戦争をよそに豊富な食糧に恵まれた無人島は大人のいない楽園にみえたのだが…。内部抗争から凄惨な闘争へ、漂流する少年たちは心の底にひそむ野性にめざめ、無益な殺戮をくり返す。極限状況のもとで獲得した新しい秩序とその崩壊をとおして、人間と社会のあり方を諷刺的に描く衝撃の名作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

takaC

82
リアル。1950年代のプレティーン(ローティーン未満)を想定すると違和感ないのかもしれないが、21世紀のプレティーンと比べるとだいぶ成熟した考え方ができているように思ってしまう。舞台が未来だとするとなおのこと。英国人なら現代でもこんな感じなんだろうか。いや、そんなことないな。ところで「ラーフ」はRalphの和訳なのかな。だったらカタカナ表記は「ラルフ」とした方が良くないか。英国英語でもRalphのLは有声だよね。原著読んでないけど平井正穂さんの翻訳は「ラーフ」以外も全般的になんとなくイマイチな感じはした。2015/09/01

のっち♬

53
孤島に漂流した少年たちの生活を通して、人間の内部に永久に巣食う悪を取り扱った作品。「大人なんか一人もいるもんか!何もかもぼくらのものだ」しかし、優柔不断に悶え、挫折感は怒りを凶暴化し、事態は緊迫する。彭湃としてみなぎる悲しみ、嫌悪の情と熱をおびた興奮の中、蠅の王が君臨する。「ほら貝は白い無数の破片となって砕け、消えていった」悪魔的な権力意志に憑かれ蛮人化する少年たち。絶望的なまでの恐怖と寂寞が心を占める。「涙がとめどなく流れ、彼はからだを震わせて嗚咽した」戦争の闇を経験した著者の暗黒意識が生み出した傑作。2020/02/18

みや

48
飛行機で孤島に不時着した少年たちが、極限状況で人間性を失っていくディストピア小説。凄い凄い凄い!こういう本を待っていた。狂気と恐怖が充満して血生臭い。最高。最初は豚を殺すことも躊躇った少年たちが、隈取りによって「個」を失し、集団で共鳴し合いながら野蛮性を解放していく。表現する言葉を知らず、現実的に未来を想像できず、心の中に潜む恐怖の正体と向き合えない。子どもだからこその恐ろしさが凝縮されていた。再読して登場人物一人一人をもっと深く読み込みたい。ラーフの「なぜ、きみは、ぼくがそんなに憎いんだ?」が凄く好き。2017/08/30

メルト

40
飛行機の不時着によって無人島で暮らすことになった少年達の物語。と言っても「皆で力を合わせて〜」ではなく、すれ違いから内部抗争へと変わっていく様子を描いた作品で、人間が内包している理性と野性がぶつかり合う、強い衝撃を感じた物語でした!人間は誰しも野性を持っているし、そしてそれは危機的な状況下で顕れやすいだろうけど、それでも理性を保ち、蛮人じゃなく、人間として生きたいなと思いました。しかし、この状況では蛮人になってしまうのも無理はなく他人が上からの口出しはできないです。自分の中の善悪の基準が揺さぶられました。2017/11/15

レモン

32
15年振りくらいの再読。ほぼ覚えていなかったので、肌が粟立つような展開だったことに驚愕。狩猟隊を称する呼び名も蛮人に変化し、その名が示す通りの人間に変貌していく様が恐ろしい。こんなに怖い小説だったとは。一応分類上はハッピーエンドかもしれないが、到底ハッピーとは思えないラスト。ラーフは重度のPTSDを発症しそう。サバイバルであることは確かだが、よくある殺人ゲームのような生か死かの極限状態という訳でもないのに。我に返った瞬間の少年たちの涙が哀れ。外的要因によって人はどこまでも残酷になれる事実に絶望する。2024/06/16

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