内容説明
人間の仕掛ける罠を嘲笑うかのように逃れて、コランポー一帯の牧場を荒らしまわる狼王ロボ。しかしロボにも弱点があった…。自然の尊厳と脅威を体現したかのような狼の物語の表題作以外に、孤独な森の王者となった熊の生涯を描いた「灰色グマの伝記」、小さな妖精「カンガルーネズミ」、威厳に充ちたシカを狩猟する少年の物語「サンドヒルの雄ジカ」を収録する。
著者等紹介
シートン,アーネスト・T.[シートン,アーネストT.][Seton,Ernest T.]
1860~1946。英国生。カナダの森林地帯で育ち、ロンドン、パリで絵を学ぶ。1898年、自筆の挿絵を入れて発表した「私が知っている野生動物」が大ベストセラーとなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
49
初読。2014年1044冊め。。子どもの頃に児童書で読んで以来のシートン動物記。ロボとブランカは記憶に残っている。シートン本人の視点、動物の視点、第三者の視点と、うまく使い分けられている。お気に入りはカンガルーネズミ。月光の下で踊っているところを想像してしまう。2014/11/10
なる
47
同じ生物学を扱う本といえばファーブル昆虫記が浮かぶのだけれど、学術的な解説が中心となっているファーブルに比べ、シートンは動物を題材にしながらも物語としての要素が強く、主題となる動物の物語というかたちで生態系もさりげなく詳細に紹介しているのが凄い。表題作『狼王ロボ』と人間との戦いを俯瞰で眺めて記述する作者。2作目『灰色グマの伝説』はより一層ストーリー感が強くて感情移入する。研究書っぽいテイストの『カンガルーネズミ』を挟み、鹿狩りの少年を描く『サンドヒルの雄ジカ』が真骨頂。自然と人間との対話に熱くなる。2023/06/25
ワッピー
42
読書会基本文献として何十年ぶりに読み直し。「狼王ロボ」「灰色グマの伝記」「カンガルーネズミ」「サンドヒルの雄ジカ」を収録。ロボとシートンの知恵比べに手に汗握り、ワーブの生活史に(擬人化にやや辟易しながら)ついてまわり、カンガルーネズミの不滅の活動力にハムスターの車回しを思い出し、雄鹿を追い回すヤンの成長と心の開放を共に体験できました。日本ではおとぎ話や民話以外で本を読む子供が最初にぶつかるオオカミ物語が「ロボ」だった時代もありましたが、今はどうなのでしょうか?自然保護区という概念を作ったシートンの功績 ⇒2020/09/13
saga
36
表題作を知ったのは小学生の頃。当時は興味はなかった。が、記憶はあった。ある時、懐かしさから本書を購入。初めて読むシートン動物記は、想像していた生態学ではなく、博物学と言える筆致で当初は戸惑った。生業として狩猟をする訳ではないシートンが、野生生物の命を絶つことに罪悪感を抱いていることを感じさせる文章。訳者も解説で反動物園・水族館を標榜している。その気持ちは分からないではない。多くの人は、他の動植物の命を貰って生きている。しかし、多くの人は命のやり取りから遠く離れた場所で生きているのだという思いに駆られた。2018/10/28
hope
30
僕の読書の原点のひとつ。出会いは小学校一・二年。シートンとファーブルに夢中だった。初めて書いた読者感想文だったかな。そんで、何十年ぶりかの再読。…これ、ハードボイルドだな。気高き王。強靭な肉体。聡明で狡猾。愛に殉じる最後。自分が好む読書傾向は、幼少時に既に形成されていたのか。2020/11/12