内容説明
１９６３年夏、ワイオミング州ブロークバック・マウンテンで出会ったイニスとジャック。野営しながら羊の移動牧畜の仕事をする間の芽生えた親密さは危険な一線を越えた。４年後、互いに募らせた思いは一気に噴出する。タブーを犯した真率な愛は世間や家族の目を逃れた大自然の奥深くに隠れ家を求める他ない。米西部を背景に同性愛の悲劇を描いた２００６年ゴールデングローブ賞４部門受賞映画原作。
著者等紹介
プルー，アニー［プルー，アニー］［Ｐｒｏｕｌｘ，Ａｎｎｉｅ］
１９３５年、コネチカット州生まれ。雑誌のライターを経て短編小説を書き始め、５０歳代から本格的な執筆活動を開始。’８８年短編集でデビュー。’９３年長編『港湾ニュース』で全米図書賞、’９４年ピュリッツァー賞受賞。’９６年長編『アコーディオンの罪』、’９９年短編集『Ｃｌｏｓｅ Ｒａｎｇｅ』（’９８年度全米雑誌賞とＯ・ヘンリー賞受賞）、’０２年長編『オールド・エース』刊行。現代アメリカを代表する作家の一人（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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匠
152
映画を観てから読んだ。あまりに短く、映画のほうが行間部分をだいぶ膨らませて描いてたことには驚いたが、映画でカットされてしまったジャックの少年時代の重要な出来事が読めたのは良かった。思い出のシャツを提げたクローゼットが隠れゲイを指す隠語でもある「クローゼット」と重なり、強く印象に残る。同性婚が認められた国々でもいまだ地域によってはゲイ差別による殺人や自殺が多いが、この作品に描かれる１９６３年～１９８３年ならなおさら、心のままに自由に愛を育むなど難しい時代。山の名前にも象徴される世間との厳しい隔たり（続く⇒2014/07/17
metoo
52
映画を観て手に取った原作。頁が少ないことに驚く。しかし一行一行読み応えがあり原作者の英語での表現がルビで添えてあり楽しい。例えば「ジャックも思わず同調して」の「思わず同調」に「ジャンプ・イン」とルビが振られている。乾いた過去と心を持った青年が出会い求め合う。理屈抜きで惹かれあった者同士は性別を超える。心で繋がる場合もあれば体で結びつく場合もある。引用すれば「二人は、まるで正しい鍵が鍵穴のシリンダーとかみ合うほど自然に」この作品を女性が書いたことに驚き敬意を表する。2014/09/03
miyu
45
驚くほど短い物語だ。しかしそこには理屈ではどうしようもない感情の行く末がある。けして幸福ではないし出来ることなら全てを忘れてしまいたい。だが誰もがその記憶を捨て去ることなど不可能だ。導入部、落ちぶれた中年男の殺伐とした朝の描写に過ぎないのに密やかな愛しさに胸を塞がれる。イニスは夢を見た。久しぶりに。そっとしておけばしばらくイニスの傍に留まるジャックの夢だ。無骨で貧しく幼い頃から自分を抑えて生きてきた(だから言葉数も極端に少ない)イニス。ラスト近くに彼が呟く「俺は誓うよ」の真の意味を私は今も考え続けている。2017/04/08
くさてる
23
映画が良かったことを思い出し、手に取りました。短編だけど、短いなかに含まれたイメージと感傷が濃くて、映画に負けない濃密さを感じました。単純な惚れたはれたに終わらない、性愛を切り離せない男同士の関係の生々しさがはっきりしていて、リアルだった。同性愛は悲恋に終わるなどというどうしようもないパターンではなく、かれらの生きていた時代とかれら自身の生き方からこうなってしまったのだという物語としてわたしは読みました。再会してすぐのモーテルの場面と、絵ハガキのところを何度も読み直しました。良かったです。2020/01/04
みつき
23
ヒースレジャー、ジェイクギレンホール主演映画の原作。1960年代のアメリカを舞台に、二人の男性が愛に苦悩しながらも時代に負けず生きていこうとした姿を描いた作品。映画を先に見たのですが、ブロークバックマウンテンでの出来事が物足りなく心理描写に期待して読みましたが、残念ながら描写は少なくあっさりとした感じでした。しかし原作では二人の仕事や家庭の状況を会話の中から拾っていける手法なのと、映画では問題がありそうな幼少期の出来事が原作では描かれているので映画と違うアングルから楽しめて良かったです。2012/10/23
