内容説明
クオイルは不器用な三十男。三流新聞を解雇され、浮気をし放題の性悪女の女房は事故で死んだ。父母も借金を抱え自殺。彼は人生をやり直すために二人の娘たちと唯一の血縁の叔母を伴い、父祖の地ニューファンドランドへ渡る。そこには一族の名のついた岬があり、叔母が昔捨てた家があった。クオイルは船の情報‐港湾（シッピング）ニュースを書く記者として雇われ、島の生活を始める…。ピュリッツアー賞、全米図書賞Ｗ受賞。
著者等紹介
プルー，Ｅ．アニー［プルー，Ｅ．アニー］［Ｐｒｏｕｌｘ，Ｅ．Ａｎｎｉｅ］
１９３５年、アメリカ・コネチカット州生まれ。雑誌の実用記事のライターを長くしたのち、短編小説を数作発表。三人の息子を育て、独立させ、５０代から本格的な執筆活動を始める。’８８年短編小説集“Ｈｅａｒｔ Ｓｏｎｇｓ ａｎｄ Ｏｔｈｅｒ Ｓｒｏｒｉｅｓ”でデビュー。’９２年“Ｐｏｓｔｃａｒｄｓ”刊行、’９３年同書でフォークナー賞受賞。同じく’９３年、２作目の長編である本書で全米図書賞、’９４年のピュリッツアー賞を受賞
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感想・レビュー
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ちえ
53
(ここまで魅力を感じない主人公もなかなかいない…）と思いながら読み始めた。浮気し放題の妻の事故死の後、二人の子供を連れ叔母と共に家族のルーツのニューファンドランド島に渡る。35歳まで褒められた事がなく新しいことには(そんな事できっこない)と思いながら（やるしかない）と思うクオイル。最後のほう彼が自分の裸に＜今肉体の絶頂にいると感じ＞ているところが好き。自分を受け入れることは一日一日日常の積み重ねの続きにあると素直に信じられる。豊かで厳しい自然描写と登場人物一人一人もとても魅力的だった◆ガーディアン10002019/11/30
りつこ
36
最近本当に本が読めなくなってきているので、以前読んで好きだった本を少しずつ再読することに。虐待されて育った主人公のクオイルはコンプレックスの塊のような男。妻に裏切られた彼は二人の娘と叔母と一緒に父祖の地へ渡り、地元の新聞社に港湾ニュースを書く記者として雇われる。茫然自失のような状態で生きてきたクオイルが、記事を書く中で島の人たちと心を通わせ、徐々に自分の人生を生き始めていく。過酷な出来事も悲惨な事件も全て生活の一部で、日々の暮らしを生きることが人生そのものなのかもしれない。しみじみよかった。2020/05/20
youyou88
12
淡々と綴られる彼らの生活。厳しい自然状況。 かいまに見られるユーモア溢れ個性的な人々。 娘の精神状態を心配し、叔母の悲惨な過去をしり、 新たな恋を見つけクオイルはだんだんと自分の人生というものを取り戻していく。 https://ameblo.jp/harayou1223/entry-11363449246.html2023/03/12
ドナルド@灯れ松明の火
12
ブルックリンで生まれてから、ニューヨーク州に引っ越した後も兄にも周りからも蔑まれ疎まれた男が、結婚し子供に恵まれるが浮気女は男と逃げ子供を売り飛ばす。両親は自殺し叔母とともに父や叔母の故郷であるニューファンドランドに引っ越す。想像を絶する苦難の末、自分の居場所を見つける話である。あえてこの作品を一言でいえば、「過酷な自然環境・地元民の中で家族と生き抜くロビンソンクルーソー風物語」だろうか。非常に面白く本作はピューリッツァー賞を受賞している。お薦め。2014/05/28
ブラックジャケット
9
気の弱い大男クオイルの再生物語。奔放な妻ペタルは愛人と交通事故でアッサリ死亡。両親も亡くなり、叔母のアグニスの誘いもあり、二人の幼い娘を連れて、一族の原点であるニューファンドランド島に向う。新規まき直しなのだが、クオイルは無力感がつきまとう。捨てる神あれば拾う神あり。地元の新聞社に入ること出来、文章など書いたことのない男のニュース原稿作りとなる。この北の果ての描写が絶品。漁業と港湾が仕事のすべて。クオイルはミニマムな生き方で新たな方向を見出す。ウェイヴィという新しい伴侶を得て、新聞記者の生活が続く。 2021/03/31
