内容説明
「どこから来たのか、誰にも言えなかったに違いない」モンドは、「両膝を抱えて砂浜に腰をおろし、陽がのぼるのを眺める」のが好きだった。コートダジュールのさざ波もまばゆい南仏ニースの海辺、そして憧れの異国はひなびた町にこだまする子供たちの遊び声が今にも聞こえてくるようだ。ありふれた子供たちの風景から、神話的な雰囲気すら醸し出す素敵な物語が八話。珠玉の短篇集がついに文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
127
トリュフォーの映画「大人はわかってくれない ~Les Quatre Cents Coups」の世界を優しい目で見れば、こうなるのかもしれない。映画の原題は、ダメなことを何回もするような暮らしとか態度のことだと思うが、ここの子供達は映画に出てくる不良の少年と同じくくりにいる。彼らのそんな気持ちを理解して見守る作者の視線でわたしも温かい気持ちになった。2020/01/13
やいっち
77
比較的若い時期の短編集。内容案内には、「子どもたちのいる風景をみずみずしい感性で描く素敵な物語」云々と。訳者によると、これ以上ないほど「言語は極めて平明」という。実際、「物質的恍惚」は別格としても、「調書」や「大洪水」のような込み入った表現は見当たらない。それは主人公が子供ということもあろう。子供の誰もが持つだろう好きな自然や社会の居場所は、大人が忘れ捨ててしまった澄明なで、肩書など無縁で意味をなさない世界なのであり、表現もそれに見合うものであるべきだというル・クレジオの主張もあるのか。2021/03/06
ω
49
ゼェゼェ…(;´д`)根性で何とか読了ww 初クレジオでしたが短編集ならいけるやろと思ったら、自然の描写(想像力も)えぐーーー!!! そこに没入するのが凡人にはむずいのよ。 特にコレ好きって思ったのは、唯一大人が主人公の「アザラン」が良かった!2022/12/21
jahmatsu
38
天気いい週末に、絶賛家籠りで腐りだしそうな、小生のメンタルにデトックス効果ありありの短編集。幻想的であり子供たちに浄化される、美しい本。2020/05/10
kana
31
無垢な少年少女たちと美しい自然との交流がきらきら眩しくなる作品集でした。中でも『モンド』がとびきり良いです。どこからきたのかわからない少年が家族を求めて彷徨いながら、残酷な現実からは目を背けてふわふわ生きていく様子に儚さゆえの美しさを感じます。ただ全体的には少年少女の思考とひたすらの自然描写なので読んでいるとすぐ眠くなってしまってなかなか読み終わらなくて困りました。それでも『モンド』だけは読みやすかったのでこれだけ挿絵つきの薄い単行本にして出版すればいいのに、と思いました。2013/08/08
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