内容説明
ついに絨毯を手に入れ〈魅法〉の魔力の源に迫るシャドウェル。だがそれは、世界を破壊しかねない危険な欲望だつた。キャルとスザンナは、それを阻止して、〈綺想郷〉を守ることができるのか…そして砂漠では、災いをもたらす究極の殺戮者が数十年の眠りから目覚めようとしていた―あのスティーヴン・キングを瞠目させた、奇想あふれるダークファンタジーの傑作巨編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
266
エンディングには余韻を残すが、下巻の大半が戦いの場面に終始するのはファンタジー文学としては残念だ。しかも、それぞれの場面を可能な限り可視化して描いてゆくために(それがこの作家の文体表現の特質でもあるのだが)、ややもするとデジタルで構成されたロール・プレイイングのようにも見えかねない。換言すれば、ここでの魔法や幻想世界に道具立てめいた限界を感じてしまうのだ。また、「死」が軽々しく扱われることにも抵抗感がある。それは「生」をも軽視することに他ならない。つまるところ、私はこの作品があまり気に入らなかったのだ。2016/12/13
ケイ
120
何とも言えないひきこまれ方だった。名作ではないけれど、ジャンクフード的なやめられなさ。何かおかしいと思いつつも深く考えずにどんどん読んでしまった下巻。結局彼らが何者なのか、なぜいるのかよく理解できないままだったし、人間が妖怪もどきを倒せるとも思えず、大前提のところで本当は躓いている気がする。それでも、読み手のこちらも深く追求するよりはナンセンスさを楽しんだ。イマコラータとその周辺のものたちを電車の中で友人に話すと爆笑していたので、こういうナンセンスSFは悪くないのかもしれない。2017/05/29
扉のこちら側
71
2016年326冊め。【170-2/G1000】本来ファンタジーは得意ではないのだけれど、これは日常世界から徐々に争いに書き込まれていく上巻の描写が秀逸で引き込まれた。その分下巻の展開は幾分駆け足だったように思う。随分と登場人物も死んでいったし、恐ろしい描写も多いのだけれど、人を引き込む世界観の作りは圧巻。過度に何かを欲すると、それなりの代償を伴うものなのである。2016/05/13
セウテス
60
フーガの地で、シャドウェル軍とフーガの精魅たちとの戦いが始まる。多くの命を犠牲にし、やがてシャドウェルはフーガの始まりの地にたどり着く。しかしそこに彼の欲したものは無かった。崩壊し始めたフーガから脱出した彼は、戦いの元凶虚無に存在するという妖げつを求める。善と悪の関係を敢えてハッキリとさせず、敵味方双方に迷い等を持たせる意味は解らなくもない。しかし日本のコミック、アニメ、ゲームの中に、多数見る事が出来るのではないだろうか。悪が単なる敵で終わらず、超絶した存在に成ろうとする考え方や、描写は素晴らしかった。2016/10/29
Empirestar
6
日常にある不思議をうまく組み合わせ、かい離させていく手腕に圧倒される。そしてタベストリーの中に織り込まれた世界というアイディアはミクロコスモスへの我々の憧れをうまく具現化した話だと思う。また、バーカーの『ウィーヴワールド』の世界はゲーム的な位相をうまく組み込み、理性と白痴、純粋と混合、男性と女性、混沌と秩序という相反する対立概念をうまく組み合わせながら、『ダムネーションゲーム』でも追求された「何かを得ると何かを失う」という機会費用の構造がうまく組み込まれている。2009/05/23