内容説明
1950年代末のパリ。ブエノスアイレス出身で作家志望のオリベイラは、酒にジャズに酔い、いつ果てるとも知れない芸術談義に耽るボヘミアン。そんな彼の前に現れたウルグアイ出身の小児を抱えた娼婦ルシア(ラ・マーガ)。二人の愛の生活が始まる。ある日忽然と姿を消したルシアを探し求めパリの街をさまようオリベイラ。『ユリシーズ』の実験的技法で描くアルゼンチン作家の傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
15
上巻の200ページでダウン。パリの知識階級のアルゼンチン人たちが繰り広げる人間模様。ヨーロッパ文学哲学文化一般の知識とクラシック、ジャズ、ロックの音楽文化とが饒舌に語られ、植民地人の劣等感を拭い去らせようとしていることがありありと出ている。それだけにうんざりする。メキシコ人はアイデンティティを探し求めていたが、アルゼンチン人はそこまで深刻にはならず、といっても語るのはヨーロッパ大陸とアメリカの文化。やはり引け目を感じるのであろうか。なかなか難しい。この小説の眼目であった第2巻の指定読みはパスした。2022/03/21
渡邊利道
5
およそ30年以上ぶりの再読。細部を忘れていたり、中にはものすごく大きな勘違いをしたりしていたのだが、読んでいるうちにパッと思い出して混乱するのがなんとも言えず気持ち良い。昔はわからなかった引用がわかるようになっていたり。またこれを読んだ十代後半のひどい生活を思い出して、実際にはすごく楽しかった気分だけはあるのだが、よくもまああんな生活で楽しかったものだなあと感心するやらぞっとするやら。こんなブルジョワの怠惰な青春に当時すごく感情移入していたのを不思議に思ったりする。若さってすごい。 2020/07/11
迦陵頻之急
0
全編を埋め尽くす修辞、隠喩、言及。著者個人の蘊蓄と知識の引き出しの全てを読者が共有していなければ、全編を味読することは到底不可能。この語り口は主人公の狷介な人となりを描くための方法なのか、だとすれば飽くまで修辞として読み流すのも可であるが、もし著者自身の作品表現ならば極力付いて行かねばならぬ。文体や主人公の自意識のことをひとまず置けば、内容は現代の「ラ・ボエーム」といったところ。市井のメロドラマやドタバタ喜劇のエピソードにも事欠かないが、皮相的内容に捉われると作中人物から「俗用文学」と言われてしまいそう。2025/02/10
astrokt2
0
未レビュー2009/05/30