内容説明
革命騒ぎの最中、グリンゴ爺さんは死に方を求めて、ハリエットは家庭教師としてメキシコにやってきた。ふたりが出会うのは革命派の若き将軍トマス・アローヨと彼につき従う丸顔の女。メキシコ革命の戦塵のなかに消息を絶った,『悪魔の辞典』の作者アンブローズ・ビアスの最期の謎を、アメリカ人女性と革命軍士官の愛憎劇をおり混ぜながら描く。メキシコの作家フエンテスのアメリカ批判の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
長谷川透
25
メキシコに行方を眩ましたアンブロース・ビアスの最期を描いた小説と聞き、南北戦争の渦中のジャーナリズムに生涯を捧げた男の謎めいた最期を興味深く目で追いながら読んだ。「老いぼれ」の形容など齢の絶対数を示すだけの言葉に過ぎずグリンゴの生き様はロマンに溢れ官能的でもある。粗筋や設定自体は単純な部類に入る小説であるが、非常に読み難い。その原因は語り手の視点が突然多重的であることや、時間の流れが時々澱むことにあろう。加え、ビアスの小説や著作や『キホーテ』の物語の時間まで介入してくるものだから、かなり厄介な小説だった。2012/11/19
拓也 ◆mOrYeBoQbw
24
長篇小説、歴史if。ラテンアメリカ文学の傑作の一つ。多くの要素と重奏的な内容で一度に全てを語るのが難しい作品ですが、私としては”境界と、境界を越える物語”として読む事が多く、エロスとタナトス、アメリカとメキシコ、政府と革命軍、鏡の向こうとこちら側・・・・様々なイメージとフレーズの反復や、(女主人公の追憶という形ですが)主観や時間の移り変わりを使い、グリンゴ、ハリエット、アローヨ、丸顔の女の4人を中心にリアルかつ象徴的に語られていきます。アンブローズ・ビアスが好きな人に特におすすめの一冊ですね(・ω・)ノシ2017/12/18
ハチアカデミー
21
その地で彼は名乗らない。名前で呼ばれない。グリンゴすなわちアメリカ野郎と呼ばれる。あれほどにも国を憎み、ともに生きた男が。アメリカとメキシコの国境に踏み入れた一人の老いぼれと、青春を終えた女性。二人は部外者としてその地に居座るものとして互いに惹かれつつ、それぞれの目的を果たそうとする。男は死を、女は新たなる生を。そんな二人の間で振り回されるメキシコの将軍は、彼らに惹かれつつも、憎しみの念をぬぐい去ることが出来ない。「メキシコはわたしたちがなりえたものの証拠なんだ」というグリンゴの言葉が強く印象に残る。2014/05/08
fseigojp
8
フェンテスは、テラノストラがあまりに長大なので本作でよしとする2024/09/28
まふ
4
「悪魔の辞典」で知られるアンブローズビアスがメキシコに消えて以来不明であった行方を想像して物語にした作品。だが、体調不十分(多分風邪だと思う)のため力はいらず30ページで放棄した。アメリカでベストセラーになったらしいが、フエンテスの文章はとっつきにくい。挫折だ。でも、大体概要は理解した。2021/07/23