集英社文庫<br> 失われた足跡

集英社文庫
失われた足跡

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  • サイズ 文庫判/ページ数 396p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784087602371
  • NDC分類 963
  • Cコード C0197

内容説明

アメリカの大都会に住む音楽家である私は、ある大学から未開種族の楽器の入手を依頼される。気乗りのせぬまま、愛人を伴ってオリノコ河上流へと出発する…。近代から未開へと遡行するなかで、自然そのもののような女と出会った。しかし、捜索にきた飛行機に発見され、私は文明世界へ連れ戻されてしまう。数か月後、再び女のもとへと旅立ったが、かつて私がたどった足跡は消し去られていた。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

35
読友さんの感想から興味を持って借りました。文明から旧約聖書的神話の内在する原始への移行、イザベルのような情婦と娘でありながら母のような恋人や自らの野性に揺れ動きながらも主人公は文明の残りと己のエゴの噴出によって幸せを永遠に失う。主人公にしては自業自得としか言えないのですが要所要所の描写の活発性が素敵です。一番、印象に残ったのは先住民によって虐殺された宣教師が聖セバスチアヌスと例えられた所でした。2013/06/28

saeta

10
第9シンフォニーの回想シーンや空を埋め尽くす蝶の大群で夜が明けなくなる自然の描写など、物語に奥行きを添えていたように思う。ジャングルの奥地へと河を遡り、たどり着いた楽園で裸になり創造力の根源を見つけていく音楽家。紙資源が乏しい未開地から譜面欲しさに元いた都会に戻るが、もう自分の求めていた世界ではないと気づき再度楽園を目指す。しかし、その道はもう閉ざされてしまった。なかなか示唆的で読む歳においても感想が変わって行きそうな気がする。いつか再読したい作品である。2016/11/07

fseigojp

9
音楽理論に詳しかったら、もっと面白かったろう2024/10/05

ネムル

8
未開種族の楽器を求めて河を遡るうちに、いつしか時間そのものを遡るように……。ともの凄くそそる内容のはずなのだが、かなり退屈。なにより文章が面白くない。西洋帰りのインテリの衒学的な思い入れたっぷり且つ古めかしい語りには、プリミティヴなものに接近する驚異や緊張感は無く、こうして時間を表現してみましたというだけにしか感じない。読む前はポポル・ヴーの音楽なんてマッチしそうと思っていたが、これだとカルペンティエルが負けそう。ただし、本でポポル・ヴーが出てきてちょっと笑った2013/07/12

keitatata

6
インディオの幻の楽器を求めて、オリノコ河を遡る主人公。都会暮らしのインテリ音楽家はやがてジャングルに暮らす人々の生命力に感化されていき、新たなる野生の自分を発見する。つまり「インドにいって人生観変わった」の極端な話と思ってもらえるとよいだろうか。現代文明を否定し大地に還る様がとてもわかりやすく描かれている。未開の川を遡っていく有名な小説にはコンラッド「闇の奥」がある。コンラッドはコンゴ河の果てに地獄を発見したが、カルペンティエルはオリノコ河の果てに「楽園」を発見した。ぜひその目で楽園を垣間みて欲しい。 2012/07/04

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