内容説明
高速で移動する未確認物体が、北米大陸各地で目撃された。ペンシルヴェニアの路上、ボストンの沖合、カンザスの湖底―。ミルウォーキーでの自動車レースに出現したその物体は並み居る高性能車をごぼう抜きにしてミシガン湖へ消えた。アメリカ政府はその技術を数千万ドルで買い取ると広告するが、届いた拒否の返答には“世界の支配者”の署名が…。ヴェルヌ晩年の異色作、本邦初訳で登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニミッツクラス
27
94年(平成6年)の税抜602円の文庫初版。集英社ヴェルヌ・コレクションの一冊で、カバーはメビウス作品を流用して本文とは関係ない。本書は「征服者ロビュール」の続編。主人公の一人が、過日気球派を空中船で翻弄したロビュールである。前作終盤に於いてロビュールは性急な進歩の押し付けを幾分後悔しているが、本書では相変わらずの独断専行のかまってちゃんを演じている。特筆すべきは本書の登場人物も舞台も100%北米な事だ。ウエルズは英国人だから、母国を卑下愚弄するような近未来話を書きたくなかったのが見て取れる。★★★★☆☆2022/09/27
Yuta Nakamura
2
この時代に読んだからか、世界の支配者がなんとなくちっぽけな存在に感じてしまったが、こういうものを数十年前に想像して文章に落とし込めるのがすごい。天才すぎて世間に理解されない科学者の感情をうまく表していた。 2023/11/09
ats
2
征服者ロビュールを読まずに先にこれを読んだのは多少失敗だったでしょうか? 後半に前巻にあたるそれのダイジェスト説明があるので完全ネタバレにも等しかったです。海底二万里みたいに、いきなり超絶マスィィンに搭乗して世界中大冒険展開ではないです。奇怪な事件がいくつか起こる→なんかの乗り物が原因らしい→それを追う というような展開。エプヴァンプト号でしたか、出てくるのも後半のケツに差し迫った所だけですし、あまりメカニズムも明らかにされてません。それにしてもネモ船長の名が出てきたのは少し驚きました。2013/03/20
bittersweet symphony
1
先日のロビダ( https://bookmeter.com/reviews/41263670 )からの連想で読みました。十数年前の集英社文庫ジュール・ヴェルヌ・コレクションの未読分がこれで終了。陸海空を進めるオーバーテクノロジーな乗物をひとりの警部が追いかける地味な話です。小説としての語り口も地味(プロットも型どおり)、最終的にその乗物を操る人物の自滅で終わるのですがその終わり方もまた地味なのですが、これが何故か悪くないんですねぇ、不思議なもんです(古典落語のようなものかもしれません)。2007/09/24