内容説明
高空から降り注ぐ最後の審判のラッパのような音。そして各地の尖塔の頂きにくくりつけられた旗。世界中にまきおこったこの怪現象に各国は騒然とする。その頃フィラデルフィアの気球愛好家の集会に現れた男はロビュールと名乗り、自分は大空を征服したと宣言した…。飛行戦艦〈あほうどり号〉での自由奔放な空の旅がいま始まる。人類の夢、飛ぶことへの憧れををのせてヴェルヌが描く空中の冒険。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
89
これは空版の『海底二万里』。潜水艦ノーチラス号に対して空中船<あほうどり号>。ネモ艦長に対して国籍不明の技師ロビュール。同行者は海洋生物の権威アロナックス教授に対し、気球研究の権威アンクル・プルーデント氏とフィル・エヴァンズ氏、と写し鏡のような作品。ネモ船長に比肩するほどの存在感を示すロビュールだが、『海底二万里』に比べて本書の知名度はかなり低いのは物語に膨らみが無いからだ。『海底二万里』が10ヶ月弱に対し、こちらは一月半。飛行旅行の速さを物語のスピード感で表したのは解るが内容的には実に味気なく感じた。2018/05/24
ニミッツクラス
25
93年(平成5年)の税抜583円の文庫初版を読んだ。集英社ヴェルヌ・コレクションの一冊でカバーはメビウス作品を流用。著者の心躍る冒険譚は多数あり、どの主要人物にも一定のカリスマ性がある。学者のように経験や最新知見を開陳する場合は良いが、母国や植民地の歴史的・宗教的背景や性差・身分の関係性を誇張するアクの強い人物が主人公の場合もある。本書も航空黎明期の気球派と飛行機派の確執と拉致案件の冒険譚なのだが、双方の主人公が日本的民度を逆撫でする。痛み分けの結末だが、続編があるので読みたくなる魅力がある。★★★★☆☆2022/09/03
ハカセ
3
単純に冒険モノとしても楽しめるが、ヴェルヌの作品にちょくちょく出てくる突出した科学力(技術力)は疎まれるというテーマが比較的色濃く出ていて面白かった。今さら叶わぬ願いではあるがこのテーマをもっと深く掘り下げたヴェルヌ作品を読みたかったな。2011/11/11
真魚
2
嵐のシーンは印象的で、それは後の天空の城ラピュタにおける、タイガーモス号の同様シーンそのもの。クライマックスがまたなかなかに素敵。2009/01/07