内容説明
豪華ヨットに乗り、どこの国にも縛られず病人を看る、地中海諸国では知らぬ者とてない名医アンテキルト博士。これこそ復讐の鬼となったサンドルフ伯爵の仮の姿であった。シチリア、ジブラルタル、アルジェリア―。仇敵を追い求めての旅もついに大団円を迎える。彼の本拠地である理想郷アンテキルタ島に迫る海賊の軍団。めざす裏切り者はその中にいる…。波瀾万丈の一大ロマン、ここに完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
89
地中海という広大な舞台で、次々に主人公の前に現れる、過去の人たちとの再会。出来過ぎた偶然だとも思う一方、人の縁の不思議さを最近感じる私はこの物語の展開を受け入れやすくなった。昔の善行は必ず将来恩返しとなって返ってき、また悪行は災厄となって将来降りかかってくる、だからこそ人は今を一生懸命生きるべきだと、メッセージを込めているように思える。昨今、十年、数十年単位の企業の不正行為、不祥事が明るみになり、過去に遡って罰せられるようになった今、必ずしもこの作品で語られる復讐劇は単に物語という尺で収まらないと思える。2018/11/28
ehirano1
69
「モンテ・クリスト伯」では復讐に対する内面的葛藤が印象的だったのですが、本書では復讐への迷いが一切ありませんでしたwww。著者は自分だったら「モンテ・クリスト伯」をこういう風にどうしても書きたいという欲求が炸裂した作品だったのではないかと思いました。2024/03/10
kasim
33
下巻は舞台をシチリア、ジブラルタル、北アフリカと移して、サンドルフ伯爵の復讐をさらに追う。国家に帰属せず、高性能船と部下だけを拠りどころに生きる姿はネモ船長も連想させるが、あれほどの孤高や絶望はなく、『岩窟王』なのか『海底二万里』なのか中途半端にも思える。その分幸福ではあるのですが。とんがりペスカードと大山マティフーの芸人コンビがいちばん魅力的かも。題やとんがりのネーミングでも分かるように、やや古風な達意の翻訳が気持ちいい。2019/11/12
さえきかずひこ
14
いわゆる小デュマによる『モンテ・クリスト伯』をもとにヴェルヌが翻案した冒険小説のため、それとは違って舞台は19世紀のフランスから、オーストリア=ハンガリー帝国に変更されている。上巻で張られた伏線が、勧善懲悪ものなので、この下巻ではかなり強引かつご都合主義的に回収・展開されるのだが、娯楽作なのだからそういうものとして読むべきだろう。少年時代に読んだらとても面白かったかもしれないが、39歳中年男性の自分が読むには少し素朴すぎる内容だった。むろん、つまらないわけではありませんよ。ヴェルヌは好きです。2019/11/09
kagetrasama-aoi(葵・橘)
12
本家「モンテ・クリスト伯」よりスッキリしていてサクサク読めました。登場人物もそんなに沢山じゃありませんでしたし。本家ではメルセデスが不憫すぎて、大団円に少々傷がある感じがしましたが、こちらは女性問題を上手にクリアしていました。”神さま気付”の件は涙無しには読めませんでした。”とんがりペスカード”と”大山マティフー”のキャラクターがこのお話をより面白くしていました。アンテキルタ島の最後の戦い&大団円、ヴェルヌによるアンテキルタ博士の復讐譚、堪能しました。2018/10/29