内容説明
学校を卒業したばかりの正義感あふれる“坊っちゃん”が四国の中学校に数学教師として赴任した。先輩の赤シャツや野だいこなど、偽善的な俗物教師たちを相手に“坊っちゃん”は大騒動をくりひろげる…。歯ぎれのよい文体とさわやかなユーモアあふれる本書は、漱石の作品中最も多くの読者に愛された小説である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
218
冒頭で二階から飛び降り無茶をする主人公。父、母、兄との相容れぬ距離感に胸を衝かれる。それは片や封建的な家制度、片や功利文明への距離感でもあろう。清という理解者に初めて愛されるが、清は坊っちゃんの出世を待ち望み、そこにも重苦しい距離感がある。坊っちゃんは松山に赴任し、家の中(心の中)の距離感は広い世界(現実)の〝距離〟になる。生徒とのもめ事や、赤シャツ達との闘争があり、敗残者のように松山を去る坊っちゃん。でもそうやって、明治の青年は、心の距離感を現実の距離として生き直すことができた。私も負けてはいられない。2024/09/21
しんごろ
158
ひょんなことから十何年ぶり、ひょっとしたら20年以上ぶりくらいの再読です(^-^)けっこう物語の内容を忘れてました。山嵐はもっと頻繁に登場してたと思ってたし、うらなりもこんなキャラだったかなと思ったり、赤シャツをやっつけるラストシーンは、こんなんだったかなと…かなり忘れてましたね(^^;)いまだドラマ化されたりするあたりは、もし夏目漱石が今、生きてたら、ベストセラー作家に間違いなくなってたでしょう(^^)狙ったわけではないど、夏目漱石の命日に読了!物語はサクッと読めたけど、解説は読むの大変でした(^^;)2016/12/09
アキ
105
べらんめえの勇み肌の坊ちゃんの松山での教師生活の顛末記。威勢はいいが、終始清へのオマージュであり、最後その清が死んで墓に入るところでしんみりと終える。ターナーの松とは、「チャイルド・ハロルドの巡礼ーイタリア」1832。負け惜しみが強い江戸っ子の坊ちゃんと、強情な会津っぽの山嵐が、ハイカラ野郎の赤シャツと野だの野郎を正義の天誅でぽかすか殴る。「智慧比べで勝てる奴ではない。どうしても腕力でなくっちゃ駄目だ。なるほど世界に戦争は絶えないわけだ。個人でも、とどの詰まりは腕力だ」明治39年1906年発表の小説。2024/04/14
rico
102
ちゃんと読んだのは初めて。色々突っ込みどころはあれど、痛快、青春、というイメージ通り、直球勝負の作品に見える。となると気になるのは、漱石がこの物語を書いた理由。解説によると、病んだ精神を癒すためだとか。なるほど、主人公は極端に「曲ったことが嫌い」で何者にも忖度しない。漱石がしばしば描いた悩める知識人の対局の人物像。清という絶対的な拠り所を配した上で、かつて教鞭をとった地で思い切り暴れさせ、もう一つの人生を生きて自らを解放しようとしたのかも。漱石先生、いかがですか?おこがましいですけど・・・2020/11/20
nakanaka
65
大学を卒業し言われるがままに四国の数学教師として赴任することになった主人公。悪ガキの生徒たちや個性的な同僚教師たちとのユーモラスな生活を描いた作品。余りも有名な作品ですが初読みでした。飄々とした主人公の姿が面白く、まるで森見登美彦作品のようだと感じました。森見先生もきっと影響を受けているのでしょう。夏目漱石の教員時代の体験が下地としてあるそうですが、夏目自身楽しみながら書いた作品だった気がします。日本中に愛されている作品だということも納得です。2024/09/19