内容説明
春のニューヨークを震撼させた悪夢。アマチュア探偵ファイロ・ヴァンスが関わった事件の中で、最も陰惨にして奇怪、戦慄的なものといえば、間違いなくこの“僧正殺人事件”だろう…。「だあれが殺したコック・ロビン?『それは私』とスズメが言った」マザー・グースの歌詞をなぞるように進んで行く不条理な連続殺人。ヴァンスと犯人との鬼気迫る攻防―!乱歩がベスト3に選んだ「童謡殺人」の歴史的傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぽんくまそ
10
キリスト教は全く関係がなく「わらべ歌殺人事件」であり「西洋将棋殺人事件」であり「頭の良い容疑者が多すぎる殺人事件」である。前作の終盤で次の殺人を阻止しようとカーチェイスをしていたが、本作でも似た展開があり、単なる謎解きだけではない。本作は1929年発表だが100年前とは思えない新しさがある。探偵ヴァンスは理論ではなく膨大な知識から溢れる感性だけで真相にせまる珍しいタイプだ。だから定石どおりの捜査をするマーカス検事の方が非常時以外は頼りになる。でも非常時が来ちゃう。ここで脳筋刑事大活躍。映像化を見たい。2025/05/21
ソルト佐藤
8
ヴァン・ダインは初読み。読んだこともないのに、なんだか懐かしい感。そう、これは新本格の初期の雰囲気。他の古典では牧歌的な部分を感じたけれど、これはそこはなく。なるほど、いわゆる本格ミステリの典型がここでできたのか。探偵の衒学趣味とか(笑 もっとも、こちらは本当の知識人が書いているので、幅広く、内容はさっぱり(笑 事件としては古典にありがちな前半はたるい。でも、容疑者がしぼられるたびに、そいつが殺されるシュチュエーションは二時間ドラマみたいで楽しい(笑2019/10/13
siberia
3
伝説的古典とはいえ、衒学的な描写、台詞の応酬が冗長でかなり辛い。クリスティ、クイーンの前に読んでおくべきでした。2024/06/27
Hiro
2
さすが傑作と誰もが推すだけのことはある。今読んでも一定楽しめる作品だ。でもこういう、本格推理の古典にはよくあるように本作もまた途中がちょっと退屈。つまり冒頭の特色ある犯罪の描写が一段落するとしばらくは関係者への聞き取りとか手がかりになるのかどうかよく分からない様々な物証の発見や登場人物の細かな行動など、どうしても地味で煩雑で盛り上がりにくく、捜査の進展もない描写が続きやすい。この部分を我慢してラスト100ページくらいまで読み進む忍耐が必要なのだ。でも本作の場合そうした忍耐が充分報われるだけの結末であった。2019/08/19
来古
2
「黒死館殺人事件」でも感じたが、ペダントリーは自分には合わない気がする。あと、この動機であれだけの事件を起こすのは不自然ではないだろうか?2017/11/11